欧州議会と欧州連合(EU)加盟国は6月30日、域外国政府から補助金などの支援を受けた企業によるEU企業の買収や公共調達での受注を制限する「外国補助金に関する規則案(Foreign Subsidies Regulation)」の内容で基本合意した。EU市場で影響力を強める中国を念頭に置いたもので、一定規模以上の買収や公共調達への入札について事前通知を求めることが柱。欧州委員会が健全な競争を歪めると判断した場合、取引を差し止めることも可能になる。
EUは単一市場における公正な競争を確保するため、国家補助規制で企業への公的補助を厳しく制限している。しかし域外企業には適用されないため、産業界は中国をはじめとする外国政府の補助金を後ろ盾に国営企業などがEU企業を買収したり、安い価格で入札に参加している可能性があると警戒を強めていた。
こうしたなかで欧州委員会は20年6月、「外国補助金に関する競争の公平性」と題する白書をまとめ、21年5月に同白書を土台にした規則案を発表していた。今後、欧州議会と閣僚理事会の正式な承認を経て新規則が導入される。
規則案によると、域外国政府から5,000万ユーロ相当を超える補助金を受けた企業が、売上高5億ユーロ以上のEU企業を買収する際、補助金について欧州委に予め通知することを義務付ける。域外国政府から400万ユーロを超える補助金を受けた企業が、取引額2億5,000ユーロを超える公共調達に参加する場合も同様の義務を課す。
域外国政府による補助金には直接補助だけでなく、低利融資や税制上の優遇措置、無制限の保証など、あらゆる形の公的補助が含まれる。欧州委は通知に沿って審査を行い、域外国からの補助金によって競争が歪められると判断した場合、必要に応じて資産売却や補助金の返済といった是正措置を求めるほか、買収や落札を阻止することが可能。通知を怠った場合は最大で年間売上高の10%の制裁金を科すことができる。
さらに買収や公共調達の取引規模が上記の基準を下回る場合でも、域外国からの公的補助によって競争が歪められる可能性があると判断した場合、欧州委は職権に基づいて調査を行うことができる。