スポーツ用品世界2位のアディダスが中国事業で大きな問題を抱えている。2022年4-6月期の世界売上高が10.2%増の55億9,600万ユーロと2ケタ成長を確保するなか、同国売上は大幅に縮小。主要市場のなかで唯一、落ち込んだ。厳しいロックダウンの直撃を受けた格好だが、カスパー・ローステット社長は経済紙『ハンデルスブラット』に、他にも問題があることを明らかにした。
4-6月期の中国売上高は28.3%減の7億1,900万ユーロだった。新型コロナウイルスの流行と感染防止に向けた当局の厳しい規制がネックとなった。Eコマースに限ると売り上げが12%増えていることから、同社製品の需要自体はなくなっていない。ローステット氏は「欧州ではワクチン接種率が高く、また多くの人がすでに感染した。中国はそこまで行っていない」と述べ、コロナ禍と規制が同国でいつまで続くのか誰も分からないことに懸念を示した。
中国共産党の青年団や人民解放軍は昨年、ウイグル問題に絡んでアディダスやナイキ、H&Mなど西側のスポーツ用品、アパレルメーカーのボイコットを呼びかけた。その影響は現在も続いている。同氏はインフルエンサーを通したマーケティング活動を西側ブランドが行うことはもはやできなくなっていると述べた。
中国の消費者に対する理解が足りなかったことも現在の不振の一因だとの認識も示した。「彼らは中国風のタッチを求めている。つまり、例えば中国風のスタンドカラーであったり、漢字入りのシャツのようなものであったり」と指摘。同社が把握しきれなかったニーズを地場系の競合がうまく拾い上げたという。
社長が早期退任へ
アディダスは22日、ローステッド社長が26年の任期満了を待たず来年、退任することで監査役会と合意したと発表した。早期退任の理由は明らかにされていない。株価と中国事業低迷の責任を負わされたと目されている。後任は未定。