特殊化学大手の独エボニックは15日、窒素肥料の使用を大幅に削減する技術を開発していると発表した。窒素は製造に際し大量の二酸化炭素(CO2)が排出されるうえ、施肥量が多いと土壌・地下水汚染を引き起こす問題もあることから、そうした弊害を減らす狙い。微生物と補助剤を組み合わせることで実現する。
同社が開発中の微生物生物刺激剤(バイオスティミュラント)を作物の葉に散布すると、葉の下面にある気孔から植物内部に取り込まれる。同剤に含まれるエボニックの生分解性拡展剤「ブレイクスルー」の作用で成分は目的の場所に運ばれる。また、成分の1つである同社製シリカ「シペルナト」は微生物の寿命を延ばす。これら補助剤と微生物の働きで植物は窒素を獲得できることから、窒素肥料の投入量を抑制できる。
エボニックが小麦とトウモロコシを使い温室で行った試験では窒素の施肥量を最大50%減らせることが分かった。今後は屋外で試験を行い、成分を改良。2025~27年に市場投入する計画だ。
合成窒素肥料の生産では製品1トン当たり1.2トンのCO2が排出される。全世界の使用料は年1億1,370万トン(20/21年度)に上ることから、その1.2倍のCO2が排出されている計算だ。欧州連合(EU)はこれを踏まえ、化学肥料の使用量を30年までに20%削減することを目指している。