天然ガス調達価格の高騰で経営危機に陥った独エネルギー大手ユニパーの臨時株主総会が19日に開催され、同社を国有化する計画が承認された。欧州連合(EU)の欧州委員会が公的支援に関する審査でゴーサインを出せば計画が実施される。同委は一部事業の売却を条件に近日中に承認すると目されている。
ロシア国営の天然ガス大手ガスプロムは6月中旬、ガス管「ノルドストリーム1」の供給量を容量の40%へと削減した。ガスプロム最大の国外顧客であるユニパーはこの結果、契約量の40%しか供給を受けられなくなった。現在は供給が完全に停止されている。
ユニパーはこれを受け、極めて割高なスポット市場での代替調達を余儀なくされている。都市エネルギー公社などの顧客には従来の契約に基づき低価格で一定量を供給しなければならないことから、同社は巨額の損失を抱え込み、2022年1-9月期にはドイツの上場企業で戦後最大の純赤字(403億700万ユーロ)を計上した。
天然ガス輸入最大手のユニパーが経営破たんすると国内のエネルギー安定供給が損なわれ市民生活と経済に甚大な影響が出ることから、政府は9月に国有化方針を打ち出した。最大で330億ユーロの出資を行う。第1弾として近く80億ユーロの第3者割当増資を引き受ける。その後はガス調達に伴うユニパーの新たな損失を踏まえ出資額を最大250億ユーロ上乗せする。
国は現在の親会社であるフィンランドのエネルギー大手フォータムに対しては約5億ユーロを支払い、保有株を取得する。取引が完了すると国の出資比率は約99%に達する。