欧州委が「グリーンディール産業計画」発表、国家補助ルール緩和で米IRAなどに対抗

欧州連合(EU)の欧州委員会は1日、EUが世界に先駆けて2050年までに気候中立を実現するための成長戦略「欧州グリーンディール」の一環として、再生可能エネルギーや電気自動車(BEV)をはじめとするグリーン産業の競争力強化を目的とする「グリーンディール産業計画」を発表した。BEV購入優遇策などを盛り込んだ米国のインフレ抑制法(IRA)や、多額の補助金と緩い環境規制で企業誘致を強力に進める中国を念頭に、規制環境の改善などを通じて「ネットゼロ産業」(温室効果ガス排出の実質ゼロに貢献する産業)の振興を図る。9~10日のEU首脳会議で同計画について協議する。

グリーンディール産業計画の柱は、規制環境の改善と資金調達の支援強化。規制環境に関しては、許認可プロセスの各段階に審査期限を設けるとともに、各加盟国に許認可手続きを1カ所で処理するシステムを整備し、電池やヒートポンプ、ソーラーパネルなど、域内にクリーンテクノロジー関連の生産拠点を新設する際、迅速かつ簡潔に認可されるようにする。欧州委は3月中に「ネットゼロ産業法案」を発表すると表明した。

資金調達に関しては、EU国家補助規則を改正し、一定の条件の下で一時的にルールを緩和して、加盟国がネットゼロ産業に補助金を拠出しやすくする。気候変動対策に3,690億ドルを投じる米国のインフレ抑制法などに対抗し、補助金や税優遇措置などの公的支援を目当てにEU企業が域外に拠点を移すのを防ぐのが狙い。ただ、経済規模の小さい加盟国からは、国家補助ルールを緩和してもドイツなど資金豊富なごく一部の加盟国を利するだけといった批判も出ている。欧州委は加盟国の意見を踏まえ、近く改正案をまとめる。

EU予算の枠組みでは、新型コロナウイルス禍からの経済再建に向けた復興基金の約9割を占める復興レジリエンス・ファシリティ(RRF)から約2,500億ユーロが拠出される見通し。このほか欧州委は新たに「欧州主権基金(European Sovereignty Fund)」を創設する構想も打ち出したが、財源など詳細は今夏までに発表すると説明している。

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