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2023/2/15

総合 - ドイツ経済ニュース

商工会議所がGDP予測を大幅引き上げ

この記事の要約

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は9日に発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、2023年の国内総生産(GDP)が前年比で実質横ばいになるとの予測を提示した。昨年秋の前回レポートではマイナス3.0%を予想してい […]

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は9日に発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、2023年の国内総生産(GDP)が前年比で実質横ばいになるとの予測を提示した。昨年秋の前回レポートではマイナス3.0%を予想していたが、エネルギー価格高騰に対する政府支援策が奏功していることもあり、大幅に上方修正した。ただ、エネルギーと原料価格は依然として高水準にあり、マルティン・ヴァンスレーベン専務理事は、企業は利益を圧迫され投資資金のねん出が難しくなっていると厳しい認識を示した。

DIHKは毎年3回(年初、初夏、秋)、会員企業を対象に大規模な景気アンケート調査を行っている。今回の年初調査では約2万7,000社から回答を得た。

それによると、事業の現状を「良い」とする回答の割合は前回調査(秋)の32%から34%へと増加。「悪い」が19%から15%へと減ったことから、「良い」と「悪い」の差(DI)は13ポイントから19ポイントへと拡大した。特に製造業でDI値が高い。サプライチェーンひっ迫の緩和と歴史的な高水準に達している受注残高がプラス要因となっている。

今後1年間の事業見通しを「改善する」とした企業は、過去最低となった前回の8%から16%へと倍増した。「悪化する」は22ポイント減の30%と大幅に減っている。ただ、DIはマイナス14ポイントと極めて低い水準にあり、長年の平均であるプラス5ポイントを大きく下回った。

先行き見通しが悲観的なのはエネルギー・原料価格が高水準にとどまっているためだ。エネルギー・原料価格を今後1年間の事業リスクと答えた企業は最も多く、72%に上った。過去最高となった前回を10ポイント下回ったものの、大半の企業にとって深刻なコスト要因になっている状況は変わらない。エネルギー・原料への依存度が高い製造業では同回答が85%に達した。建設(79%)、流通(75%)、サービス(64%)でもエネ・原料高騰が最大のリスク要因となっている。

製造業空洞化の恐れも

電力・ガス・燃料価格の高騰対策では「省エネ」との回答が最も多く71%に上った。これに「顧客への価格転嫁」が53%、「エネルギー効率引き上げに向けた投資」が36%、「投資の抑制」が20%で続いた。「他のエネルギー源への切り替え」は11%。

製造業では「国外への生産移管」が7%に上った。エネ価格の高騰が長期化するとエネルギー集約型産業を中心に製造業の空洞化が進む懸念がある。

今後1年間の投資額を「増やす」との回答は3ポイント増の27%に拡大した。「減らす」は8ポイント減の26%となり、増加に歯止めがかかったものの、先行き不透明感の強さと資金不足を受けて投資を抑制する企業は依然として多い。

メーカーを対象に今後1年間の輸出見通しを尋ねた質問では、輸出が「増える」との回答が前回を7ポイント上回る23%へと増加。「減る」は16ポイント減の24%へと大きく縮小した。ただ、DIはマイナス1ポイントとこれまでに引き続きマイナスの領域にとどまっている。

全体を強く押し下げているのはエネルギー集約型企業で、DIはマイナス8ポイントに上った。欧州のエネ高騰で国際価格競争力が削がれているという事情が背景にある。消費財メーカーもインフレで消費者の購買力が低下していることからマイナス4ポイントとなった。

一方、投資財メーカーはプラス11ポイントとなり、輸出増を見込む企業が圧倒的に多かった。部品不足が解消の方向に向かっていることと、受注残高が高水準に達していることが大きい。連邦統計局によると、投資財メーカーの受注残高は昨年11月時点で売上高の10.7カ月分に相当している。DIは電機業界で15ポイント、自動車で13ポイント、機械で10ポイントに上った。

製薬は消費財産業に入るものの、DIは最も高く19ポイントに達した。

今後1年間の雇用の見通しに関しては「増える」が13%から17%に拡大し、「減る」は20%から15%に縮小した。DIはプラス2ポイントなり、前回のマイナス7ポイントから大きく改善した。部門別でみると製造とサービスがそれぞれプラス4ポイントを記録。流通はマイナス4ポイント、建設はマイナス7ポイントと振るわなかった。