欧州連合(EU)の欧州委員会は13日、再生可能エネルギー由来の電力を利用して製造される再生可能なグリーン水素の定義に関する委任規則案を発表した。エネルギーミックスにおける再エネ比率の目標を定めた「再生可能エネルギー指令」に基づく法案で、脱炭素化に大きく貢献できる可能性のあるグリーン水素の普及に向け、再生可能な水素とみなすための条件を明確化。これにより投資を促し、生産拡大を後押しする。欧州議会と閣僚理事会が4カ月以内に否決しなければ、規則案が施行される。
使用時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素エネルギーは幅広い産業での活用が期待されており、EUは2050年までの気候中立を目指す欧州グリーンディールの目標達成に不可欠な要素と位置付けている。欧州委はロシア産化石燃料依存からの早期脱却を目指す政策「リパワーEU」で、30年までにグリーン水素の域内製造と域外からの輸入をそれぞれ1,000万トンにするとの目標を打ち出した。ただ、グリーン水素の製造には風力や太陽光など再生可能エネルギーに由来する電力が必要なため、既存の発電施設から再エネ電力の供給を受けた場合、他分野への供給が減り、結果的に化石燃料による電力生産を拡大する事態が懸念される。
委任規則案によると、グリーン水素とみなすためには、水素生産を目的として追加的に設置された発電施設から再エネ電力の供給を受けること(追加性)が条件となる。また、グリーン水素が再エネ電力を利用して生産されていることを認定するうえで、水素生産と再エネ電力の生産との間に地理的および時間的な相関性があることを条件としている。
ただし、グリーン水素の生産拡大を後押しするため猶予期間を設け、27年末までは追加性の要件を除外し、既存の発電施設から再エネ電力の供給を受けた場合でもグリーン水素とみなす。時間的な相関性についても29年末まで要件を緩和する。
委任規則案はEU向けに域外で水素を生産する事業者にも適用される。