欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2023/3/1

総合 - ドイツ経済ニュース

国際規格への影響力強化へ、産学官の連携機関設立

この記事の要約

ドイツ連邦経済・気候省は2月23日、「ドイツ標準化戦略フォーラム」という機関を立ち上げた。規格と標準がDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)で決定的に重要な意味を持つことを踏ま […]

ドイツ連邦経済・気候省は2月23日、「ドイツ標準化戦略フォーラム」という機関を立ち上げた。規格と標準がDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)で決定的に重要な意味を持つことを踏まえた措置で、フランツィスカ・ブラントナー政務次官は「規格化は戦略的・競争政策的な視点からみてドイツにとって、そしてまた欧州にとってますます重要になっている」と述べた。

同フォーラムは産学の幅広い利害を調整・一本化することで国際規格・標準の策定にドイツの利害を強く反映できるようにする目的で設置された。欧州連合(EU)欧州委員会が新設した「欧州標準化ハイレベルフォーラム」と連携しながら活動していく。ドイツにとって戦略的に重要なテーマを特定したうえで、標準化に向けた欧州と世界の会議などに専門家を重点的に送り込む。

ドイツ標準化戦略フォーラムは議長であるブラントナー氏のほか、経済・業界団体や研究機関、規格機関、企業、官庁の代表で構成されている。

規格・標準は製品の国際市場競争を大きく左右する。自国の規格が国際標準となれば、当該国のメーカーが国際事業を簡単に展開できるのに対し、他国の企業は製品を適合させなければならず、手間暇がかかるためだ。これまでは長年、独・欧州の規格が国際標準となることが多く、欧州勢は優位に立つことができた。

だが、近年は中国が国際標準の重要性を認識。世界経済への影響力を強め地政学的な立場を強化するために、国際標準を自国に有利に展開するための活動を活発化させている。国際標準化機構(ISO)で同国が事務局を務める件数は2000年の6件から19年には79件へと拡大した。

ブラントナー氏はこれに絡んで中国の名指しを避けながらも『ハンデルスブラット(HB)』紙に、「世界の別の地域でも競争上のメリットを得るためにこの価値ある手段(規格・標準)が戦略的に利用されている」と述べた。

ドイツ政府やEUはこれまで、国際標準の策定に関与しない姿勢を取ってきた。民間のニーズは民間が一番よく分かっているためで、国際標準は民間主導で取り決められていた。

独・欧州は機械など古典的な技術分野に強いことから、国際標準の策定で優位性を保ってきた。だが、ソフトウエアや人工知能(AI)などデジタル分野では中国の技術力が高い。しかも中国は政府が国際標準の策定に積極関与するなど官民が一体となって取り組んでいることから、影響力が大きい。地政学的な思惑の絡んだ同国の広域経済プロジェクト「一帯一路」を通しても中国規格の国際化を推進しており、欧州企業は国際市場へのアクセスで不利になる懸念がある。

EUの欧州委員会はこうした事情を踏まえ昨年2月、標準化戦略を打ち出した。デジタル化やグリーン水素、重要資源のリサイクルなど将来性の高い分野で標準化の主導権を握る考えだ。欧州の重要な標準策定に関してはドイツ規格協会(DIN)などEU・EEA(欧州経済領域)加盟国の標準化機関が行うようにし、域外の影響力を排除する。また、EUと加盟国の標準化機関の連携を強化し、国際標準策定の重点分野を特定する。

ドイツ標準化戦略フォーラムはEUの標準化戦略を踏まえて設置された。DINの役員はHB紙に「標準化のテコの効果は、ドイツの専門家がその知識を欧州・国際的な規格化に持ち寄ることで発揮される」と述べた。