ドイツ連邦統計局が2月22日発表した1月の消費者物価指数(2020年=100)は前年同月比8.7%増の114.3となり、インフレ率は前月(8.1%)を0.6ポイント上回った。価格転嫁が幅広い商品分野で行われていることを背景にエネルギーと食料品を除いたコアのインフレ率も上昇しており、コメルツ銀行のチーフエコノミストは「インフレ前線の警戒解除」には時期尚早だと指摘した。天然ガスの国際市場価格が大幅に低下したことや、12月にインフレ率が低下したことなどを受け、これまではインフレがピークを過ぎたとの見方もあった。
1月のエネルギー価格は前年同月を23.1%上回り、上げ幅は前月の20.3%から拡大した。12月は天然ガスと地域熱の料金を国が全額負担(12月緊急支援)したため水準が押し下げられており、1月はその反動が出た格好だ。1月からは電力と天然ガス、地域熱に上限価格が適用されるようになったものの、12月緊急支援の終了に伴う押し上げ効果を相殺し切れなかった。各エネルギーの上げ幅は天然ガスで51.7%、電力で25.7%、灯油で30.6%に上った。自動車燃料は7.0%と比較的小さい。エネルギーを除いたインフレ率は7.2%だった。
食料品の上げ幅は20.2%となり、前月(20.4%)同様に高水準を記録した。乳製品・卵で35.8%、食用油脂で33.8%、パン・穀物製品で22.7%と平均を上回っている。食肉・肉製品は18.9%、野菜は11.5%、果物は5.0%だった。エネルギーと食料品を除いたコアのインフレ率は5.6%で、前月を0.4ポイント上回った。
非耐久消費財と耐久消費財の上げ幅はそれぞれ17.0%、6.2%に上った。
サービスの上昇率は4.5%だった。上げ幅は住宅メンテナンス・修理(16.9%)、飲食(10.9%)で特に大きかった。
前月比のインフレ率は1.0%に上った。エネルギーが8.3%上昇。天然ガスと地域熱は12月緊急支援が終了した反動で上げ幅がそれぞれ46.1%、63.9%に達した。同支援の対象となっていなかった電力は6.5%と比較的小さい。石油製品では自動車燃料が1.9%上昇したものの、灯油は3.3%低下した。
統計局は今回から消費者物価統計の基準年を従来の15年から20年に改めたほか、各商品の構成比率などを変更した。それとともに新基準をもとに22年と21年のデータを再計算。22年のインフレ率は従来の7.9%から6.9%へと大幅に下方修正された。21年は3.1%に据え置かれている。
各月のインフレ率も修正されており、22年9月は10.0%から8.6%、10月は10.4%から8.8%、11月は10.0%から8.8%に引き下げられた。新基準では同年に10%を超えた月がない。(表1、表2を参照)
欧州連合(EU)基準のインフレ率は前年同月比が9.2%、前月比が0.5%だった。