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2023/3/8

総合 - ドイツ経済ニュース

気候変動の経済損失は最大9千億ユーロに

この記事の要約

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相とシュテフィ・レムケ環境相は6日、気候変動に伴いドイツで発生する経済損失に関する調査レポートを発表した。経済・気候省の委託で作成された同レポートは、猛暑・干ばつの増加などの形で気候 […]

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相とシュテフィ・レムケ環境相は6日、気候変動に伴いドイツで発生する経済損失に関する調査レポートを発表した。経済・気候省の委託で作成された同レポートは、猛暑・干ばつの増加などの形で気候変動の影響がすでに鮮明になっていると指摘するとともに、今後は一段と強まると強調。対応策を講じなければ2022年から50年までの損失額が最大9,000億ユーロ強に達すると警鐘を鳴らしている。環境省は現在、気候変動対応法の原案を作成しており、近く関連省庁と調整手続きを開始する予定だ。

エコロジー経済研究所(IOeW)と経済構造研究協会(GWS)、調査会社プログノスが共同作成した同レポートによると、気候変動の経済損失は2000年~21年の21年間で少なくとも1,450億ユーロに達した。損失額は10年代以降に大きく増加。特に18年以降はわずか4年間で計80億ユーロと全体の55%を占めた。18年から2年連続で起きた猛暑・干ばつと、21年7月にアール川などで発生した集中豪雨・大洪水で金額が膨らんだ格好だ。21年の大洪水は損失額が405億ユーロに上った。

気候変動が今後、一段と進むと、深刻な干ばつや洪水が発生する頻度は高まり、これまで「100年に1度」と言われてきた規模の大規模自然災害が毎年のように起こる懸念がある。住宅・インフラの損傷、生産活動の停止、サプライチェーンの支障、凶作・森林破壊、猛暑・災害による死者の発生・健康被害・労働効率の低下、種の多様性の減少など直接・間接の損害は大幅に膨らむ見通しだ。ドイツのように産業が発達し貿易依存度が高い国には遠く離れた国の大規模な自然災害も大きなしわ寄せをもたらす。

レポートはこうした事情を踏まえ、22~50年の損失額を気候変動の度合いが(1)小さい(2)中程度(3)大きい――の3つのケースに分けて算出した。(1)では2,800億ユーロ、(2)では5,300億ユーロ、(3)では9,100億ユーロに上る。

損失額は気候変動への対応投資を行うことで削減できる。最悪の(3)の場合でも3,500億ユーロへと60%減らすことができる。経済・気候省のシュテファン・ヴェンツェル政務次官は、「気候保護に投資する1ユーロ1ユーロが、極端な気象現象により今後、発生する経済的な費用を低減させる」と明言した。

一方、国立科学アカデミー・レオポルディーナは同日公開した提言書で、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度未満に抑えるとしたパリ協定の目標を達成するため独・欧州に残された時間はほとんどないとの見解を表明した。共同執筆者のヴェロニカ・グリム氏(政府経済諮問委員会=5賢人委員会の委員)は「急がなければならい」と強調した。