化学大手の独BASFは2月24日、欧州のコスト削減プログラムと、本社所在地ルートヴィヒスハーフェンにある総合生産施設(フェアブント拠点)での生産縮小計画を発表した。欧州の「過剰規制」(ブルーダーミュラー社長)とコスト高という以前からの問題に加え、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー高で利益が圧迫されていることを受けた措置。天然ガスと電力価格は高止まりが予想されることから、事業再編に踏み切る。
コスト削減プログラムは2023~24年にドイツを中心に実施する。サービス、研究・開発、本社でコストを年5億ユーロ以上、圧縮する意向だ。従業員およそ2,600人を整理する。
ルートヴィヒスハーフェン総合生産拠点では2つあるアンモニア工場のうち1つを閉鎖。川下の飼料工場も閉鎖する。アンモニアを原料とするアドブルー(尿素水溶液)は生産を継続する。
アジピン酸工場では生産能力を引き下げる。これに伴い前駆体であるシクロヘキサノールとシクロヘキサノンの工場、およびアジピン酸生産の副産物を使用するソーダ灰工場も閉鎖する。アジピン酸を前駆体とするポリアミド6.6の生産は継続する。
TDI工場も閉鎖する。欧州、中東、アフリカでの需要が弱く、稼働率が低迷しているためだ。欧州のTDI工場はルートヴィヒスハーフェンにしかないため、欧州の顧客には今後、米国、韓国、中国の工場から供給する。
同総合生産拠点の再編は段階的に実施。26年末に完了すると、年コストが2億ユーロ以上、圧縮される。従業員700人が影響を受けるものの、同社はその大部分を異動の形で社内にとどめる意向だ。ドイツでは専門人材不足が深刻化していることから、技能を持つ社員を安易に手放せない状況にある。
BASFが同日発表した22年12月期決算の純損益は6億2,700万ユーロの赤字となり、前期の黒字(55億2,300万ユーロ)から大幅に悪化した。ロシア事業の所有権を事実上はく奪された天然ガス・石油子会社ヴィンタースハル・デーエーアーで評価損63億ユーロを計上したことが響いた。営業利益(EBIT、特別項目を除く)は11.5%減の68億7,800万ユーロ、売上高は11.1%増の873億2,700万ユーロだった。
23年12月期は売上高で840億~870億ユーロ、営業利益で48億~54億ユーロを見込む。戦争に伴う先行き不透明感、エネルギー高、金利上昇が響く。