自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は17日、スペイン東部サグントで車載電池セル工場の定礎式を行った。新工場は同国自動車産業の将来にとって大きな意味を持つことから、式典にはペドロ・サンチェス首相や国王フェリペ6世が出席した。
電池子会社パワーコが工場を建設し、2026年から量産車用の次世代セル(統一セル)を生産する。年産能力は40ギガワット時(GWh)で、将来的に60GWhに引き上げることを視野に入れている。雇用規模は3,000人強で、サプライヤーなどの間接雇用は最大3万人に達する見通し。サグント工場で生産したセルは主にスペイン北部のマルトレルとパンプローナにある完成車工場に供給する。
パワーコの電池セル工場は現時点で計3カ所に設置することが決まっている。このうちサグントと独ザルツギターの拠点は着工済み。残りはカナダのオンタリオ州セントトーマスで、同社は今月中旬、同地に北米初のセル工場を建設すると発表した。
セル事業に絡んではVWのトーマス・シュマル取締役(技術担当)が17日ロイター通信に、原料を採掘する鉱山への出資を計画していることを明らかにした。電動車の急増で原料の需給ひっ迫と価格高騰の懸念があることを踏まえたもので、同氏は「原料のボトルネックは採掘能力だ」と明言した。世界のどの地域のどの鉱山に出資するは伏せている。メディア報道によると、電気自動車(BEV)専門メーカーの米テスラも鉱山への資本参加を検討しているという。
VWはBEV販売のすそ野を拡大するため、大衆ブランドで低価格モデルを投入する計画。セル原料の調達コストが膨らむと低価格化が難しくなることから、鉱山に出資し安定したコストで原料を確保する意向だ。