35年以降も内燃機関車の販売をEUが容認

欧州連合(EU)の欧州委員会は25日、2035年以降も条件付きで内燃機関車の新車販売を認めることでドイツ政府と合意したと明らかにした。二酸化炭素(CO2)と水素を原料とする合成燃料を使用する場合に限って販売を容認するというもので、28日のエネルギー相理事会で正式合意が成立した。内燃機関車を全廃するという従来方針は修正された格好だ。

欧州委のティメルマンス上級副委員長は協議終了後ツイッターで、「将来における合成燃料の使用についてドイツと合意に達した」と表明した。ウィッシング独交通相も「カーボンニュートラルな燃料だけを使用する内燃機関車は35年以降も新規登録が可能」と投稿。「e-Fuel(イーフューエル)」と呼ばれる合成燃料のみを使用する車両を対象とする新たなカテゴリーを設ける必要があり、24年秋までに手続きを完了したいとの考えを示した。

合成燃料は再生可能エネルギー由来の水素と、発電所や工場などから排出されるCO2を合成して生成される。ガソリンなどと同様に燃やせばCO2を排出するが、大気中のCO2を回収して製造できるため、温室効果ガスの排出は「実質ゼロ」とみなされている。

EUは50年までの気候中立に向けた中間目標として、30年までに域内の温室効果ガス排出量を90年比で55%削減することを目指している。欧州委は21年7月、この中間目標を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、乗用車と小型商用車の排出規制を厳格化する規則案を提示。35年以降はBEVや燃料電池車など「ゼロエミッション車」に限って新車販売を認め、ガソリン車やディーゼル車に加え、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)も域内での販売を事実上禁止することを提案した。

22年10月に欧州議会と閣僚理事会が規則案の内容で基本合意し、今年2月には欧州議会が正式に採択。閣僚理の正式承認を残すのみとなっていた。だが、自動車産業のすそ野が広いドイツが合成燃料を使用する内燃機関車の販売を認めるよう主張し、現行案のままでは支持しない意向を表明。3月7日に予定されていた採決が延期され、最終局面で法案成立の見通しが不透明になっていた。

合成燃料の扱いをめぐっては、イタリアや東欧諸国がドイツに同調する一方、フランスはBEVシフトに遅れが生じかねないとして強く反対している。また、閣僚理で合意に達しても、欧州議会が反対する可能性もある。

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