独北部のハンブルク港トラーオルト・コンテナター埠頭(CTT)に海運大手の中国遠洋海運集団(COSCO)が出資する計画が、いまだに承認されていないことが分かった。ドイツ政府は条件付きで承認することを昨秋、決定したものの、所管省庁である連邦経済省の最終承認が得られない状態が続いている。ハンブルク港運営会社HHLAのアンゲラ・ティッツラート社長が23日の決算発表会で明らかにした。
COSCOは2021年9月、CTTに35%の戦略出資をすることでHHLAと合意した。港湾物流子会社の中遠海運港口(CSPL)を通して出資し、同埠頭を欧州におけるCOSCOの荷物積み替えの「優先ハブ」とする計画。ハンブルク港の貨物取扱量に占める中国貿易の割合は約30%と断トツで多いことから、中国との海運が一段と活発化し、大きな経済効果がもたらされると見込まれている。
独連邦カルテル庁は出資計画を承認した。だが、政府・与党内では強権化する中国に対して批判的な緑の党と自由民主党(FDP)が承認に強く反対。貿易法に基づいて自国企業への外資の出資計画を審査する所管大臣のロベルト・ハーベック経済相(緑の党)は当初、認可しない立場を示していた。
これに対しオーラフ・ショルツ首相(社会民主党=SPD)が認可支持の姿勢を打ち出したことから、政府は22年10月、COSCOの出資を25%未満の純投資に制限するなどの条件付きで取引を承認することを決定した。同社は役員派遣や拒否権行使を通してCTTの運営に影響力を行使したり、純投資以外の手段を通してCTTに影響力を行使することができない。
HHLAとCOSCOはこれらの条件を踏まえて再交渉し、新たな契約を締結。12月30日に書類を経済省に提出した。ティッツラート氏は「速やかな回答を得られるものと思っていた」と述べ、認可手続きが予想に反して長期化していることを明らかにした。経済省の報道担当は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の問い合わせに、「審査は続いている」と答えるにとどめ、審査結果がいつ出るのかを明らかにしなかった。
中国に絡んでは、世界各国の港湾に設置された上海振華重工(ZPMC)製の貨物用クレーンを通してスパイ活動が行われていると米国で報じられている。ハンブルク港にもZPMC製クレーンが設置されていることから、米国防省は疑いの目を向けているという。ティッツラート氏はこれについて、クレーンの操作に必要なソフトウエアは欧州と米国製のものを使用していると指摘。中国企業がアクセスすることはできないため、問題はないとの認識を示した。