欧州連合(EU)加盟国と欧州議会は3月28日、運輸部門における脱炭素化の推進を目的とする「代替燃料インフラ規則(AFIR)案」について、政治合意に達したと発表した。国内法への置き換えが必要な「指令」から「規則」に格上げすることで、加盟国は拘束力のある目標に沿って充電設備などのインフラ整備を進めることが義務付けられる。欧州議会と閣僚理の正式な承認を経て新ルールが導入される。
2014年に施行された現行指令では、充電設備や水素充填ステーションなどの整備目標に具体性と拘束力がなく、加盟国間で取り組み状況が大きく異なる。このため欧州委は21年7月、EU全体でインフラ整備を推進する必要があるとして、同指令を加盟国に直接適用される規則に変更することを提案していた。
欧州議会と閣僚理が基本合意した規則案によると、まず乗用車やバン向けの充電インフラについて、加盟国は電気自動車(EV)1台につき1.3キロワット(kW)の充電能力が必要との試算に基づき、EV登録台数に応じて充電設備や水素充填ステーションの目標設置数を算出する必要がある。また25年までに欧州運輸ネットワーク(TEN-T)上に60キロメートル(km)間隔で、出力150kW以上の急速充電ポイントを設置する。
大型トラックやバスなど重量車用の充電インフラに関しては、25年からEU域内の主要な都市圏をつなぐTEN-Tの中核ネットワークでは60km間隔、域内のあらゆる地域をつなぐ包括的ネットワークでは100km間隔で出力350kW以上の充電ポイントを段階的に設置し、30年までに完了する。
さらに乗用車とトラックの双方に対応する水素充填インフラについては、30年以降、すべての都市部とTEN-T中核ネットワーク上に200km間隔で設置し、EU全域で燃料電池車(FCEV)や水素エンジン搭載車が走行できる環境を整備する。
このほか、大型旅客船やコンテナ船の寄港回数が一定の水準を超える域内の海港は、30年までにこうした船舶に電力を供給する体制を整えることが義務付けられる。また、域内の空港は、25年までにすべてのゲート、30年までにはすべてのリモートスタンド(ターミナルから離れた駐機場)で、停留中の機体に電力供給できるようにする必要がある。