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2023/4/19

総合 - ドイツ経済ニュース

「脱炭素で高度成長は幻想」、政府の見解を主要経済研が批判

この記事の要約

Ifoなど有力な経済研究所は5日発表した『春季共同予測(GD)』で、ドイツ政府の経済・炭素中立化政策を批判した。脱炭素化を通して高度経済成長を実現するとした考えは幻想に過ぎないと一蹴。暖房のエネルギー源を化石燃料から再生 […]

Ifoなど有力な経済研究所は5日発表した『春季共同予測(GD)』で、ドイツ政府の経済・炭素中立化政策を批判した。脱炭素化を通して高度経済成長を実現するとした考えは幻想に過ぎないと一蹴。暖房のエネルギー源を化石燃料から再生可能エネルギーへと転換する政策や、産業用エネルギーへの助成策も問題が多いと指摘した。

ロベルト・ハーベック経済・気候相は今年初、「革新的サプライサイド政策(transformative Angebotspolitik)」という経済政策を打ち出した。これは供給側(サプライサイド)のうち、炭素中立の実現に寄与する技術や業界、企業のみをピンポイントで支援するというもの。減税や規制緩和など枠組み条件の改善を通して企業の活動を全般的に活性化し、経済成長につなげる従来型のサプライサイド強化政策と異なり、支援対象を絞り込んでいるのが特徴だ。

政府は同政策により、脱炭素化が促進されるとともに、気候保護投資の効果で経済成長が大幅に加速するとみている。オーラフ・ショルツ首相は先ごろ、年成長率が約8%に達した1950~60年代の「経済の奇跡」が再来するとの見方を示した。

これに対しGDは過去数十年間の成長率が平均1.3%にとどまったことを指摘。2023~27年は労働力不足の影響もありこれがさらに0.9%へと下がるとの見方を示した。GDの作成に携わったキール世界経済研究所のシュテファン・クーツ副所長は、「ドイツ経済の成長見通しは、けん引用役畜とそのエサが減ったにもかかわらず、乗客が増えた馬車のようなものだ」として、「無駄な荷物」を速やかに捨てなければならないと強調した。

ドイツではエネルギー価格の高騰を受けて製造業の国外流出懸念が強まっている。政府内ではこれを踏まえ、助成措置を通して産業用エネルギー価格を抑制することが検討されている。GDはこれについても、エネルギー価格が高ければ省エネ技術の開発に向けた企業の取り組みは強まると指摘。エネルギー価格の支援策は不要で有害だとの認識を示した。価格競争力のないエネルギー集約型の工場を無理に国内にとどめる必要はないとの立場で、例えば再生エネ価格の低い国からエネ集約型製品を低価格で調達することは企業にとって適切な選択肢だとしている。

24年以降に設置する暖房は再生可能エネルギーの使用比率が65%以上でなければならないとした政府・与党の方針については、当該暖房の供給が需要に追い付かず現実的でないと批判した。Ifoのティモ・ヴォルマースホイザー氏は、当該製品の製造台数もこれを設置する職人も急速に増やすことはできないと指摘。供給不足で価格が高騰することにも懸念を示した。ヒートポンプなど環境に優しい暖房を普及させるためには、二酸化炭素(CO2)排出価格の引き上げを通して石油・天然ガス暖房のランニングコストを高める政策が適しているとしている。

GDP予測を大幅引き上げ

23年の国内総生産(GDP)成長率については前回予測(22年9月末)の実質マイナス0.4%からプラス0.3%へと大幅に上方修正した。エネルギー価格が低下していることから、購買力が懸念していたほど低下しない見通しとなったためだ。それでも個人消費は0.2%減少すると予想している。政府最終消費支出(-1.0%)と建設投資(-4.9%)も減少することから、内需は0.1%縮小する。GDPは輸出の伸びに支えられてプラス成長となる。

インフレについてはピークを過ぎたとの見方を示した。ただ、国の家計支援策や賃金の大幅上昇は需要を創出する効果があることから、インフレ率の低下には時間がかかるとみており、今年は昨年(6.9%)を下回るものの、6.0%に高止まりすると指摘した。来年は2.4%まで下がると予想している。

エネルギーを除いたコアのインフレ率に関しては昨年の4.9%から今年は6.2%に上昇するとの見方を示した。物価の押し上げ要因がエネルギーから他の商品に移行しているためで、来年も3.3%と比較的高い水準を見込んでいる。

急速な金利上昇に絡んでは、不動産市場に悪影響が出る可能性を指摘した。金利の上昇で住宅ローンの返済に行き詰まる世帯が増えると、銀行の財務が悪化する懸念があるとしている。

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