「安全保障は軍事・外交以上のもの」、ドイツが初の安全保障戦略を公表

ドイツ政府は14日、同国初の安全保障戦略を公表した。安全保障は市民の日常生活に直接かかわる課題だという「総合安全保障」観をベースとしており、戦略策定を主導したアンナレーナ・ベアボック外相は「21世紀の安全保障は軍事・外交以上のものだ」と明言した。市民の安全を守ることを国家の中心的課題と位置付けている。

フェイクニュースの流布やエネルギー・食料供給懸念、製造業の原材料不足、気候変動など安定した社会を脅かす要因は近年、急速に増えている。ベアボック氏は命にかかわる医薬品を薬局で入手できること、友人とのチャットを中国に盗聴されないことなどが重要だと指摘。安全保障は毎朝のシャワーで清潔な水が供給されるところから始まると趣旨を説明した。

ロシアのウクライナ侵略に関しては、欧州大西洋の平和と安全にとって当面、最大の脅威であり続けるとの認識を示した。自由と平和が「自明なものではない」(ベアボック氏)ことを如実に示したとしている。

中国については、パートナーであるとともに、競争者であり、体制上の競合でもあるとしたこれまでの認識を踏襲したうえで、近年は競合・競争者としての要素が強まっていると指摘した。また、規則に基づく国際秩序を様々な手段を通して作り変えようとしており、地域での覇権をますます攻撃的に要求するようになっていると強調した。政府は対中戦略を数カ月以内に公表する意向だ。

各加盟国の軍事費の対国内総生産(GDP)比率を2%以上に引き上げるとした北大西洋条約機構(NATO)の取り決めに絡んでは、複数年の平均で2%を確保するとの立場を表明した。オーラフ・ショルツ首相はロシアのウクライナ侵攻を受けて昨年2月末に臨時招集した連邦議会で、同比率を24年までに2%超へと引き上げ、その後もこの水準を保つ意向を表明していた。今回の安保戦略ではやや後退した印象を否めない。

上部へスクロール