フランクフルト西部のヘキスト工業団地を仏サノフィなど出資3社が売却することを検討している。複数のメディアが報じたもので、売却の可能性をすでに投資銀行と協議したもようだ。関係者は『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙に、売却するかどうかの決定は来年第1四半期に下される見通しだと述べた。3社すべてが持分を手放すかどうかは定かでないという。
ヘキスト工業団地は化学・製薬事業を展開していた旧ヘキストの生産拠点で、1997年以降はインフラサーブが運営している。インフラサーブの資本はヘキストの事業を取得した仏サノフィ(製薬)、スイスのクラリアント(特殊化学)、米セラニーズ(基礎化学)が大半を保有する。
3社とも同工業団地内に生産拠点を構えている。このため出資を続ければインフラサーブへの影響力行使を通して工業団地を自社に有利な形で運営できるというメリットがある。その一方で、撤退すれば売却益を得られるうえ、他の事業に回す資金を増やせるという別のメリットもある。
ドイツではバイエルとランクセスが2019年、経営資源を絞り込むため合弁の化学工業団地運営会社クレンタを豪金融大手マッコーリーのインフラ投資子会社マッコーリー・インフラストラクチャー・アンド・リアル・アセッツ(MIRA)に完全売却した。売却価格は営業利益の12倍に上る35億ユーロと高水準だった。投資会社は現在、資金が潤沢なうえ、安定収入を見込める投資先を模索していることから、ヘキスト工業団地の出資3社にとっては持分放出の好機だ。FAZ紙によると、売却の前提となる資産査定の準備をすでに行っているもよう。
ヘキスト工業団地はドイツ最大級の工業団地で、敷地面積は460平方メートル。化学、製薬業界の約90社が入居し、2万2,000人が働いている。インフラサーブは雇用規模が1,900人。2020年の売上高は8億6,600万ユーロで、営業利益(EBIT)7,900万ユーロを計上した。