ドイツ財務省は8日、クリスティアン・リントナー財務相(自由民主党=FDP党首)の訪中が中国側の要請で無期延期されたことを明らかにした。同氏は劉昆財政相と10日に会談する予定だった。閣僚レベルの会談が日程を理由に直前にキャンセルされるのは異例。リントナー氏と同じFDPに所属するベッティーナ・シュタルクヴァッツィンガー教育・研究相の台湾訪問などに抗議の意思を示すことが中国の狙いと目されている。
リントナー氏と劉氏の会談は10日14時30分から1時間の予定で設定されていた。6月にベルリンで開催予定の独中政府間協議の事前調整を行うことになっていたもようだ。独財務省によると、中国側は先週末に日程の延期を要請した。新たな開催日やどのような形で開催するかは未定。
シュタルクヴァッツィンガー氏は3月末、台湾を訪問し、潘文忠教育相と会談した。ドイツの閣僚の訪台は26年ぶりで、中国外務省は強く批判した。
5日に公開された独情報ポータル「Tオンライン」のインタビューでシュタルクヴァッツィンガー氏が、軍事や「我々の価値」に反する分野に投入可能な技術の領域でドイツの大学は中国との協業に慎重であるべきだと発言したことや、中国発の動画専門SNS「ティックトック」はユーザーの管理・統制に悪用されている可能性があるとの認識を示唆したことも、中国を刺激した可能性がある。
リントナー氏は野党時代の19年にも中国側から面会をキャンセルされたことがある。この時は訪中前に香港を訪問。反体制派と会談したことから、共産党高官との会談がすべて直前に取り消された。
同氏は新潟市で11日から開催される先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議には予定通り参加する。
一方、8日から12日の日程でドイツ、フランス、ノルウェーの3カ国を訪問する中国の秦剛外相は、アンナレーナ・ベアボック独外相(緑の党)と予定通り9日にベルリンで会談する。両氏は4月中旬に中国で会談しており、今回は2度目。