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次期EU長期予算の原案発表、加盟国の反発で調整難航か

2018年5月7日発行 No.197号

欧州委員会は2日、英離脱後のEU長期予算(対象期間2021~27年)の原案を発表した。英国の拠出がなくなることで財源に穴が空くが、安全保障などEUが直面する課題に対応するため、予算(物価調整後ベース)を現行の1兆ユーロから1兆2,790億ユーロに増額する。財源不足は加盟国の拠出拡大、補助金削減、新たな財源の確保で賄う。ただ、同案には多くの国が反発しており、調整の難航が必至の情勢だ。

2019年3月にEUを離脱する英国は、2020年までEU予算の分担金を負担することになっている。しかし、次期の長期予算から同国の拠出がなくなるため、EU予算の財源は年100億ユーロ以上減ることになる。

それでも欧州委のユンケル委員長は1月、EUは安全保障や移民対策、国境管理などを強化する必要があるとして、予算を縮小せず、増強していく方針を表明。2月に歳入拡大などの具体案を発表していた。今回の原案は、これに肉付けしたものだ。

欧州委は歳出削減策として、農業補助金と地域振興向け補助金の交付額を5%削減するほか、EUの基本的価値や法秩序に従わない国への補助金交付を制限する制度の導入などを提案している。

一方、必要な分野への予算は増やす方針。不法移民の流入阻止に向けた国境管理強化、安全保障、研究開発などの予算を増額する。このため、7年間の予算は現行長期予算の域内国民総所得(GNI)比1%から同1.114%に相当する規模に引き上げられる。

欧州委は新たな財源確保のため、各国が排出権取引で得る収入の20%、EUが多国籍企業の課税逃れを防ぐことを主眼に導入を計画している「共通連結法人税課税標準(CCCTB)」の税収をEU予算に組み込むことや、加盟国がリサイクルできないプラスチック包装材が生じる量に応じて、EU予算への拠出を増やすというシステムの導入を提案した。プラスチック包装材については、各国は1キログラム当たり0.8ユーロを負担する。これらによって、加盟国の負担は増えることになる。

EU長期予算は全加盟国の全会一致での合意が必要。欧州委は2019年5月に実施される欧州議会選までの合意を目指し、調整を進める。

ユンケル委員長は原案について、英国のEU離脱で財源が不足しても、より多くのことを推進するための「現実的な計画だ」と胸を張った。しかし、加盟国の間では、それぞれの事情に応じて、同案に反発する動きが出ている。

たとえば、多額の農業補助金を受け取ってきたフランスは、同補助金の大幅な削減に反発。EU予算の拠出が補助金受給を上回る純拠出国のオランダ、オーストリア、デンマークなどは、「EUが(英の離脱で)小さくなるのなら、予算も縮小するべきだ」(デンマークのラスムセン首相)として、予算増額そのものに難色を示している。また、基本的価値や法秩序に従わない国への補助金制限には、事実上の標的となるポーランドなど中東欧諸国の猛反発が必至だ。

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