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中国市場の開放をメルケル首相が要求

2018年5月30日発行 No.1188号

ドイツのメルケル首相は24~25日の2日間、中国を訪問した。訪中は11回目。中国の人権問題や北朝鮮の非核化、米国のイラン核合意離脱など幅広い分野で意見の交換が行われたなかで、最大の焦点となったのは両国間の経済問題だった。ドイツでは、自国市場の開放に消極的な中国の企業が国家戦略に基づいて最先端技術を持つ独・欧州の企業をピンポイントで買収することなどへの危機感が高まっている。

メルケル首相は2006年に初めて訪中した。首相はこのとき、中国の人権や知財権問題を指摘。ドイツ企業の中国進出を後押しするために同国への批判を控えたシュレーダー前首相との違いを明確に打ち出した。

知財権問題では模造品の横行と、外資に義務づけられた現地企業との合弁を通した「技術移転」を問題視。「中国がこれら自由貿易の新たな障害を放置するなら、欧州連合(EU)は一体となって対処せざるを得なくなる」と明言し圧力をかけ、温家宝首相(当時)から「中国は知的財産権保護を重視しており、今後も保護を強化していく」との公式声明を引き出すことに成功した。

だが、中国側のこれらの約束が実効的に履行されることはなかった。

独・欧州企業の間からはその後、中国の公共入札などで外資が差別されていることへの不満も高まっていった。メルケル首相はこれについても改善を要求してきたものの、外資の不平等な取り扱いは現在も続いている。

例えば公立病院は調達する医療機器を当局が作成したカタログのなかから選定することを義務づけられているが、欧州メーカーの製品はカタログに掲載されていない。国有鉄道車両メーカーの中国中車(CRRC)は部品調達入札でポイント制を採用している。ポイントが高い応札企業が落札する仕組みだが、中国企業はあらかじめ10ポイントが与えられていることから、外資が落札するケースはほとんどない。

経済協力開発機構(OECD)によると、中国は外国直接投資に対する開放性の面で、調査対象となった62カ国のなかで59位と最下位グループに属している。

中国政府の意向で買収活発化

中国政府は15年、産業の高度化に向けた長期戦略「中国製造2025」を打ち出した。電動車やロボットなど計10分野で世界を主導する国になる目標を設定。先端技術の獲得に向けて外国企業の買収を奨励しており、中国資本による独・欧州企業の買収はこれを機に活発化した。

監査法人大手アーンスト・アンド・ヤング(EY)によると、中国企業が16年に欧州で実施した買収・出資は前年比48%増の計309件へと拡大。取引総額は2.8倍の858億ドルに上った。この傾向はドイツ企業を対象とした取引でも認められ、件数は70%増の68件、総額は約24倍の125億6,000万ドルに達した。

14~17年の4年間に中国企業がドイツ企業を対象に実施した出資・買収175件(出資比率10%以上)を分析したベルテルスマン財団の調査によると、全体の64%に当たる112件は中国製造2025で指定された重点10分野の案件だった。そのうち21%を電動車、19%をエネルギー、16%をバイオ医療・ハイエンド医療機器、15%を数値制御装置・ロボットが占める。調査担当者はこれらの出資活動を同戦略に基づくものと断定している。

ドイツ企業が中国での活動を大きく制限されているのとは対照的に、国の支援を受ける中国企業が資金力にものを言わせて独・欧州の有力企業を“買い漁る”ことへの不満と危機感は大きく、メルケル首相は今回の訪中でこの問題に言及。中国が外資の活動制限を減らしていなければ、独・EUでの中国企業の活動を大幅に制限せざるを得なくなるとして、改善を迫った。

情報漏えいを防ぐために本社などとの通信に仮想プライベートネットワーク(VPN)を用いる外資に対し、国の認証を受けたVPN事業者の利用を義務づける中国のサイバーセキュリティ法についても、企業秘密が筒抜けになる恐れがあると懸念を表明。6月にベルリンで開催する独中定期共同閣議で協議する意向を明らかにした。

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