英中央銀行のイングランド銀行は1月30日に開いた金融政策委員会で、政策金利を0.75%に据え置くことを決めた。景気の低迷は続いているものの、EU離脱が確定したことで先行き不透明感が低下したほか、世界経済も安定化の傾向にあるとして、今回は利下げを見送り、離脱後の経済状況を見極めるのが妥当と判断した。ただ、EU離脱後の急激な変化を避けるための「移行期間」が終了する2020年末以降の状況が読めないため、経済成長が軌道に乗らない場合は金融緩和を実施する可能性を示唆した。
中銀は国民投票でEU離脱が決定した直後の2016年8月に利下げに踏み切ったが、ポンド相場の下落によるインフレを抑制するため、17年11月と18年8月の2度にわたり利上げを実施。その後は離脱を巡る先行き不透明感から企業が投資を控えるなど景気減速が鮮明になり、再び利下げに踏み切るかが焦点となっていた。年明け以降、複数の金融政策委員が利下げが必要との見解を示しており、市場では50%の確率で金融緩和に動くとの見方が出ていた。
公開された議事要旨によると、金融政策委は7対2で政策金利の据え置きを決定した。中銀は声明で、ジョンソン首相率いる与党・保守党が昨年12月の総選挙で大勝し、離脱を巡る不透明感が低下したことで1月の企業景況感が改善し、投資意欲も回復の兆しがみえることから、現時点で利下げは不要と判断したと説明。そのうえで、EUとの通商協議が難航した場合、移行期間後に英経済が混乱するリスクがあると警告。20年の実質成長率も金融危機以降で最も低い0.8%にとどまるとの予測を示し、「国内外の経済指標に前向きなシグナルが持続しない場合、英成長率の回復見込みを強化する政策が必要になるだろう」と指摘した。
3月半ばに退任するカーニー総裁は記者会見で、「昨年12月の総選挙を経て離脱の道筋がついたことで、企業の経済活動は改善に向かっているものの、経済成長がこのまま軌道に乗る保証はない」と強調。来年以降にEU離脱が経済成長の重しになる可能性があると指摘し、金融政策で成長を下支えする必要があるか見極める方針を示した。