仏政府が自動車業界に80億ユーロ支援、国内回帰が条件に

マクロン仏大統領は5月26日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で打撃を受けた国内の自動車産業に対し、総額80億ユーロの公的支援を実施すると発表した。電気自動車(EV)などを購入する際の補助金を拡充して新車需要を喚起するとともに、約10億ドルを投じて技術開発を促進する。一方、メーカーには支援と引き換えに生産の国内回帰を求め、雇用維持を図る。

マクロン氏は記者会見で「環境対応車の生産でフランスを欧州のトップにしたい」と強調。2025年までにEVやハイブリッド車の生産台数を年間100万台に増やすとの目標を打ち出した。

EVの購入補助金は、個人向けを現在の6,000ユーロから7,000ユーロに、企業向けを3,000ユーロから5,000ユーロに引き上げる。ハイブリッド車も購入補助の対象とし、2,000ユーロを支給する。また、ガソリン車やディーゼル車からEVやハイブリッド車への買い替えを促すため、所得水準の高い世帯を除いた75%の世帯を対象に最大5,000ユーロを補助する。

一方、政府は支援の条件として生産や研究開発の拠点を仏国内に置くよう求めている。マクロン氏によると、グループPSAは22年までに国内の工場に3億6,000万ユーロを投資し、EVなどの生産体制を強化すると約束。ルノーはEVの生産台数を24年までに4倍に増やすことや、EV用エンジンの生産拠点を中国から国内に移す方針を打ち出した。

ルノーは新型コロナ禍による危機に対応するため、50億ユーロの政府保証融資を求めている。政府は仏独で進めるEV用バッテリー開発のアライアンスへの参加を条件の1つしており、マクロン氏はルノーが同プロジェクトへの参加に合意したことを明らかにした。ただ、政府は北部モブージュとドゥエの2工場の雇用維持も求めており、地元自治体や労組などとの合意が成立するまで最終判断は控えると説明した。

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