欧州司法裁判所の一般裁判所(下級審に相当)は5月28日、香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスが英携帯電話サービス会社O2の買収をEUの欧州委員会から差し止められたのは不当として提訴した問題で、原告側の主張を認め、欧州委の決定を無効とする判決を下した。
ハチソンは2015年、スペイン通信最大手テレフォニカからO2を102億5,000万ポンドで買収することで合意。O2を傘下の英携帯電話サービス会社スリーと統合する方針を打ち出していた。英携帯電話サービス市場でO2は2位、スリーは4位で、統合で誕生する新会社は英携帯電話サービス市場でBTグループ傘下のEEを抜き、最大手に浮上するはずだった。
しかし、欧州委は16年、買収を認めると英国の同市場が4社体制からEE、ボーダフォンを含めた3社に減り、寡占化が進んでサービス料金上昇などの弊害を招くとして、買収計画の承認を拒否。これをハチソンは不服として提訴していた。
一般裁判所は欧州委が買収認可の審査に際して、O2とスリーの統合が英携帯電話サービス市場の競争に及ぼすマイナス効果の算定で間違いを犯すなど複数のミスがあったと認定。料金が上昇し、競争に悪影響を及ぼすことを立証できなかったとして、ハチソンの訴えを支持した。欧州委は上訴するかどうかについて、判決文を精査して決めるとしている。
EU通信市場の健全な競争の維持を重視する欧州委は、同分野の合併・買収の可否を厳しく審査してきた。加盟国の携帯電話サービス市場は4社以上の体制であることが適正という非公式の基準があった。これが今回の判決で否定されたことで、スペインやイタリア、デンマークなど4社体制の市場で買収・合併の動きが進む可能性がある。