欧州委員会は5月28日、武田薬品工業がアイルランド製薬大手シャイアーの買収に際して確約した資産売却の義務を免除したと発表した。欧州委はシャイアーの炎症性腸疾患治療薬「SHP647」の売却を条件に買収計画を承認したが、市場環境の変化によって競争上の懸念は払しょくされており、資産売却の必要はないと判断した。武田は今後数カ月のうちに進行中の臨床試験を中止し、SHP647の開発を打ち切る。
武田は2018年5月、シャイアーを460億ポンド(約6兆1,000億円)で買収することで合意した。欧州委は買収の可否をめぐる審査で、シャイアーが開発中の新薬が将来的に武田の炎症性腸疾患治療薬「エンタイビオ」と重複し、同分野で健全な競争が損なわれる可能性があると指摘。これを受けて武田がSHP647に関連した権利を手放すことを提案し、欧州委は同年11月、その実行を条件に買収計画を承認した。
武田はSHP647の売却先を選定する過程で、炎症性腸疾患治療薬をめぐる市場環境に著しい変化が生じたと主張し、欧州委に資産売却義務の解除を要請した。欧州委が調査を行ったところ、同分野ではこの間に、武田とシャイアーの治療薬より高い効果と安全性が期待される新薬が開発されたことや、SHP647の臨床試験で一部、否定的な結果が出たこと、さらに売却プロセスによって臨床試験の参加者を確保することが困難になっていることが判明。SHP647を取り巻く状況が激変しており、武田に資産売却を求める理由はなくなったと結論づけた。