ドイツのセメント業界は二酸化炭素(CO2)の排出量を差し引きでゼロにする炭素中立を2050年までに実現する考えだ。業界団体VDZへの取材をもとに『ハンデルスブラット』紙が報じたもので、炭素燃料からの脱却やCO2の貯留・有効利用(CCUS)を通して実現していく。
セメントの生産に伴い発生するCO2の量は世界全体で年28億トンに上る。これは総排出量の約8%に当たる規模で、航空機と電算センターの合計を上回る。
クリンカーは石灰石、粘土などの原料を1,400度以上の高温で焼成して作製する。これに2~3%の石膏を加え粉砕するとセメントになる。
大量のCO2 はクリンカーの製造で発生する。発生するCO2のうち3分の1は石炭の燃焼、残り3分の2は石灰石の熱分解に由来する。VDZは燃焼で発生するCO2については、燃料を再生可能エネルギーで製造する「グリーン水素」に置き換えることで排出をゼロに抑える考えだ。
一方、石灰石については投入量を減らすことは可能なものの、現時点で他の物質に全面的に置き換えることはできない。VDZはこれを踏まえ、CO2を貯留および有効利用することを目指している。
CO2の有効利用に向けては独南部のメルゲルシュテッテンで企業コンソーシアムがパイロットプロジェクトを開始する。クリンカー生産で発生するCO2を低コストで分離し、合成燃料「eフューエル」を製造する。
VDZはセメントのリサイクル技術を確立するためのパイロットプロジェクトも計画している。