仏が英漁船を拿捕、漁業権めぐる対立激化

英仏海峡での漁業権をめぐり、英国とフランスが対立を深めている。仏海洋省は10月28日、北西部ルアーブル沖で操業していた英国の漁船を拿捕したと発表した。操業が認められた漁船のリストに記載がなかったためという。英政府は強く抗議しているが、仏側は自国の漁業権が著しく損なわれていると主張し、事態が改善しない場合は英国からの輸入品に対する関税手続きの厳格化などの措置を講じると警告している。

英国のEU離脱に伴い、英仏海峡に浮かぶジャージー島など英領チャンネル諸島周辺海域でEU船籍の漁船が操業するには許可証が必要になった。これまでに仏漁船に付与された許可証は210件ほどで、240件の申請が却下または審査中となっている。仏側は英国の対応は不当だと非難し、対抗措置として領海内での英漁船の取り締まりを強化していた。

ジラルダン海洋相によると、仏当局は27日夜に実施した保安検査で英漁船2隻を停止させた。このうち1隻は操業許可を取得していなかったため、巡視艇がルアーブル港に連行。もう1隻は当局者の乗船に抵抗して船上検査を阻止しようとしたため、罰金を科した。

英政府はEU船籍からの申請の98%を許可しており、仏漁船を領海から締め出した事実はないと反論しているが、仏側は制裁をちらつかせて英国への圧力を強めている。海洋省と欧州問題担当省は27日、英側がEU離脱後の漁業権に関するEUとの合意に沿って迅速に対応しない場合、11月2日から英国からの輸入品に対する通関手続きや検査の強化、仏国内の漁港での海産物の荷揚げ禁止などの措置を講じる可能性があると警告した。

これに対しジョンソン英首相は30日、20カ国・地域(G20)首脳会議が開催されたローマで欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談し、フランスの対応は「不当な脅し」と強調。欧州委の報道官は「操業許可を受ける資格がある全ての仏漁船に許可証が付与されるべきだ」と述べ、英仏両国との協議を通じて早期の問題解決を目指す考えを示した。

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