ドイツ政府は14日、露国営天然ガス大手ガスプロムの元子会社である独ガスプロム・ゲルマニア(GPG)に対し融資支援を行うと発表した。GPGがロシアの制裁対象となり、資金繰りが悪化していることから、融資を通して同社の経営破たんを回避し、天然ガスの国内安定供給を確保する狙いだ。連邦ネットワーク庁が行っているGPGの信託管理を延長することも決めた。
政府は4月初旬、GPGを信託管理下に置いた。ガスプロムが同子会社を無許可で売却したうえ、売却先のロシア企業がGPGの清算を命じていたことが判明したためで、エネルギーの安定供給を確保するためにGPGの管理を連邦ネットワーク庁に委託した。
GPGの信託管理は貿易法(AWG)の規定に基づいて行われている。ただ、同法を根拠とする信託管理は期間が最大6カ月に制限されており、10月以降は実施できない。信託管理できなくなると、GPGの資金がGPGを買収したロシア企業に流出する懸念がある。
政府はそうした事態を回避するため、改正エネルギー安定確保法(EnSiG)を議会で成立させた。5月22日付で施行された改正EnSiGでは重要なエネルギーインフラの運営企業であれば、信託管理の期間を必要に応じて延長することが認められている。政府はこの規定に基づいて10月以降もGPGを引き続き信託管理下に置く意向だ。
ロシア政府は5月11日、GPGに制裁を科した。この結果、GPGはロシア産天然ガスの供給を受けられなくなり、調達先国を変更しなければならなくなった。だが、ガスの取引価格が高騰し証拠金(取引参加に必要な担保金)負担が膨らんでいることから、資金繰りが悪化している。
ドイツ政府はこれを受け、政策金融機関KfWを通してGPGに融資を行うことを決めた。国内の安定供給を確保するため、融資を自己資本に転換することを視野に入れている。
政府はGPGの社名をセキュアリング・エナジー・フォー・ヨーロッパ(SEFE)に改めることも明らかにした。GPGに対する一連の措置が独・欧州のエネルギー供給安定を目的としているとのシグナルを市場に送ることが狙いだ。
GPGはエネルギー取引、ガス輸送、ガス貯蔵を手がける企業。多くの都市エネルギー公社は間接的に同社からガスを調達しており、同社が国内供給で果たしている役割は大きい。
ドイツには現在、33カ所に計45基のガス貯蔵施設がある。GPG傘下のアストーラがレーデンで運営する施設が最大で、国内容量全体の約20%を占める。