イスラエル企業、廃棄物ゼロに近い植物タンパク抽出方法を開発

●レンズ豆を使った実験では、抽出率92%という高成績を実現

●2023年を目途に製品の市場投入を開始する予定

イスラエルのフードテック企業、ガバン・テクノロジーズ(Gavan Technologies)が廃棄物やエネルギー使用量を削減する新しいタンパク質の抽出プロセスを開発している。同社の新手法は植物の部位を余さず使用したり、機能性を拡大できるのが特長。今後さらに開発を進め、製品を市場投入していく方針だ。

ガバン社独自のタンパク質変性用プラットフォームは各植物成分の機能特性の用途を広げるためのもので、天然色やタンパク質分離物、調味料、グルテン代替物などの生産を促進することができる。同社はその工程の熱利用を最小化し、エネルギー消費を10分の1に抑えることに成功した。

変性タンパクに関する革新的な技術の中心的な課題は、主に新しいタンパク供給源の発見と、それを動物性タンパクに代わる味の良い新しい代替タンパクに転換する加工プロセスだ。しかし現行の手法の多くは機能性と全体性のバランスの点で植物源の価値を十分に生かすことができない状況にあると、同社の創業者で最高経営責任者(CEO)のコーエン氏は話す。そのため原料の無駄の発生につながっているというのが同氏の見方だ。

タンパク質の抽出で使われる手法は多くが多相(異なる性質を持つ複数の物質からなる状態)化学的なプロセスに関連しており、各位相において生産量と品質に悪影響を及ぼす。植物原料の80%が無駄に使われたり、コンポストや家畜飼料として消費される。また場合によっては企業が廃棄物を除去するために資源を余分に使う必要があることもある。

副産物が希釈され過ぎていて使用できなかったり、品質が悪化して有用性を失ったりすることも少なくない。エネルギーを多く使用する分離手法や乾燥技術はコストの増加や環境への悪影響につながる。そのため同社は、原料や製品ではなく生産プロセスを変えることでこうした課題の解決を目指してきた。レンズ豆を使った実験では、抽出率92%という高成績を実現し、タンパク分離物から複合糖質、繊維、ミネラル、脂肪といった有用な成分の抽出に成功した。

ガバン社はまた、アクアファバ(豆の煮汁)のような機能を持ち、卵白代替物に適した高機能でタンパク豊富な乳化剤も生産している。抽出プロセスを通して栄養豊富でくせがなく、グルテンを含有しない小麦粉を生産することが可能だという。同様のプロセスは大豆、ひよこ豆、レンズ豆、海藻などの植物タンパクに適用することができるとの見方だ。

その他にも同社は質の高いタンパク質を含有するスピルリナからタンパク濃度が高い青色着色料となるフィコシアニンを抽出したり、その残留物からタンパク質を成分とする調味料や、カラメル着色料に代わる茶色着色料、糖質の他、脂肪酸やカロチノイドに豊富に含まれる脂質を生産することに成功している。

同社は2023年にも製品の市場投入を開始する予定だ。

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