アンモニア減産が食品業界にしわ寄せ、供給量は通常の3~4割

天然ガス価格の高騰を受け欧州の化学メーカーがアンモニアの生産量を大幅に引き下げた影響が幅広い分野に及んでいる。主要肥料の窒素やディーゼル車の排ガス浄化に欠かせない尿素水の不足はすでに指摘されていたが、ここにきて食品・飲料業界が悲鳴を上げ始めた。二酸化炭素(CO2)不足が発生している。『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が15日付で報じた。

アンモニアを製造すると副産物としてCO2が排出される。CO2は温室効果があるため、排出削減の対象となっているが、食品業界では幅広い分野で使用されている。例えば、食肉の鮮度を保つために使われるガスは窒素とCO2の混合物だ。ドイツのミネラルウォーターの7割を占めるガス入り製品もその大半はCO2を使用している。ビールのビン詰めでは酸素の混入を避けるため、ビン内に事前にCO2が注入される。ビール生産を停止する企業がすでに出ている。

食肉工場では豚が痛みを感じないよう屠畜前に二酸化炭素で失神させる。CO2不足で屠畜作業が滞ると、畜産業者の畜舎では豚が大きくなりすぎて場所不足が発生する懸念がある。

温室栽培を行う農家では作物の育成を促進するためにCO2を用いている。野菜農家のトーマス・アルバースさんはFAZ紙に、CO2不足で生産量が20%減少すると嘆いた。

ミネラルウォーター業界団体の役員は、市場に供給されるCO2の量が現在、通常の30~40%に減少しているとの見方を示した。顧客企業が受け取る量は契約を大幅に下回っているが、供給元は不可抗力を宣言しているという。

欧州の天然ガス価格は現在、米国に比べ最大10倍の水準に達している。化学大手BASFはこれを受け、欧州でのアンモニア生産を抑制。欧州域外からの調達に切り替えている。

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