欧州委員会は7日、民泊など短期賃貸サービスの透明性確保を目的としたデータの収集・共有に関する規則案を発表した。米大手エアビーアンドビーをはじめとするオンラインプラットフォームによる仲介サービスの台頭で民泊利用が急拡大する中、EU共通の規制の枠組みを確立し、プラットフォーム事業者に対して加盟国の監督当局に利用状況などの情報提供を義務付けることが柱。今後、欧州議会と閣僚理事会で規則案について議論する。
欧州委によると、民泊など宿泊施設の短期賃貸はEU域内で提供されている旅行者用宿泊施設の約4分の1を占めており、2022年上半期は予約件数が前年同期比138%増となるなど、観光業における重要性が急速に高まっている。一方、こうした旅行者向け短期賃貸の需要拡大により、住民向けの安価な賃貸物件が不足するといった問題が生じており、加盟国や自治体レベルで規制を導入する動きもみられる。ただ、当局に提供される宿泊施設や利用状況に関する情報にはばらつきがあり、全体像を把握するのが困難な状況。欧州委はEU全体で持続可能な観光政策を進めるため、域内共通の規制の枠組みを構築してデータ収集を強化し、民泊の透明性を高める必要があると説明している。
規則案によると、オンラインプラットフォームを通じて宿泊施設を提供する民泊などのホストは、物件に関する情報を加盟国の監督当局に登録することが義務付けられる。登録が完了すると物件ごとに固有の登録番号が付与される。
仲介サービスを提供するプラットフォーム事業者は、宿泊施設を掲載するサイトに物件のオーナーが当局から付与された登録番号を表示できるようにし、掲載された物件と登録番号が一致しているかどうかを抜き打ちでチェックする必要がある。また、各施設の宿泊者数や宿泊日数などの情報を監督当局に毎月報告することが義務付けられる。登録された情報と実際の所在地やオーナーなどが異なるといった違反が見つかった場合、当局は付与した登録番号を停止し、プラットフォーム事業者に対してサイトから削除するよう求めることができる。