欧州司法裁判所は8日、欧州委員会が2015年にルクセンブルク政府に対して、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA、現ステランティス)に違法な公的補助を提供していたとして追徴課税した問題で、同措置を無効とする判決を下した。同様のケースで欧州委の敗訴が相次いでおり、一部の加盟国による特定企業への税優遇を問題視するEUにとって、さらなる痛手となる。
欧州委は15年10月、FCAの金融子会社に対する税優遇措置が違法な国家補助にあたるとの判断を示し、優遇を認めていたルクセンブルクに追徴課税するよう命じた。追徴額は3,000万ユーロに上る。
FCAの金融子会社は12年にルクセンブルク当局と結んだ取り決めに基づき、資本金を実際より少なく見積もるなどして税負担を減らす優遇措置を受けていた。欧州委によると、一連の措置により同社の課税所得は実際の20分の1程度に抑えられていた。
これに対してFCA側は、同措置を不当として欧州裁に提訴。下級審の一般裁判所が19年に訴えを退けたことから、最高裁に当たる司法裁に上訴していた。
司法裁は欧州委がルクセンブルクの税制を十分に理解しないまま、間違った決定を下したとして、FCA側の主張を支持。FCAの逆転勝訴が確定した。
多国籍企業による課税逃れに対して国際的に批判が高まるなか、欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、2014年に本格調査を開始。これまでにFCAを含む多くの企業が追徴課税を命じられた。
しかし、アイルランドによるアップル、ルクセンブルクによるアマゾン、オランダによるスターバックスへの税優遇措置をめぐる訴訟などで敗訴していた。