バイデン政権がEV優遇策見直しへ、米・EU貿易・技術評議会で一致

EUと米国は5日、貿易やハイテク分野での協力強化を目的とする閣僚級会合「米EU貿易・技術評議会(TTC)」を米東部メリーランド州で開き、米国の電気自動車(EV)購入優遇策の見直しで一致した。北米で生産されたEVの優遇策に対するEU側の懸念を受け、共同声明に「建設的に対処する」と明記した。

EUと米国は2021年6月の首脳会議でTCCの設置を決め、同年9月に第1回会合を開催。中国を念頭に、半導体の安定調達に向けて連携することや、人工知能(AI)などの分野で人権に配慮した技術開発を進めることなどで合意した。これまでに半導体、AI、国際貿易体制、輸出管理、投資審査、技術標準、気候・クリーン技術など10分野で作業部会を設置し、協議が進められている。

今回の第3回会合には、EU側から欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)とベステアー上級副委員長(競争政策担当)、米側からブリンケン国務長官、レモンド商務長官、タイ米通商代表部(USTR)代表が参加した。

EU・米間で懸案となっているのは、8月に米議会で成立した「インフレ抑制法」に盛り込まれたEV優遇策。米国、カナダ、メキシコで最終組み立てが行われたEV車両の購入に際し、1台当たり最大で7,500ドルの税額控除が受けられるという内容だ。EVの普及促進を図りながら、中国製品のシェア拡大を阻む狙いだが、対象を北米で組み立てた新車に限定しているため、EUや日本、韓国から見直しを求める声が上がっていた。

EV優遇策をめぐっては、バイデン大統領が今月1日、訪米したフランスのマクロン大統領との会談後に「微調整」する意向を示していた。ドムブロフスキス氏は記者会見で「詰めなければならない点は残っているものの、多少は楽観的な見通しをもって会議を終えることができた」と発言。ブリンケン氏は「議論を進めることができた」と述べた。ただ、修正の具体的な中身は明らかにしなかった。

会合ではこのほか、強靭な半導体のサプライチェーンの構築に向け、供給体制に問題が生じた場合にEU米間で早期に情報を共有するメカニズムを導入することで合意。AI分野では革新的で信頼性が高く、人権など普遍的な価値を尊重したAIシステムの構築に向け、双方が協力を拡大することで一致した。

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