メッサー―投資会社との合弁を完全傘下に―

工業・医療ガス大手の独メッサーは5月30日、子会社メッサー・インダストリーズの株式を少数株主である投資会社CVCから譲り受け完全子会社化することで合意したと発表した。全世界の事業を自らが直接展開する体制を構築する。これに伴い、シンガポール政府投資公社(GIC)がメッサーに出資。メッサーはこれによって得られる資金をCVCへの支払いに充てる。年内の取引完了を見込む。

メッサーとCVCは2019年、新設した合弁会社メッサー・インダストリーズを通して独工業ガス大手リンデから北米事業の大半と南米事業の一部を買収した。メッサーはその際、西欧事業(ドイツ、スペイン、ポルトガル、フランス、ベネルクス諸国、デンマーク)を同合弁に移管。この結果、アジア、中・南東欧事業は自らが直接運営するものの、西欧と北米、南米事業はメッサー・インダストリーズを通して間接的に運営する体制となっていた。今回の取引が成立すると、西欧、北米、南米事業も直接運営できるようになる。シュテファン・メッサー社長(当時)は4月、メッサー・インダストリーズをメッサーに100%統合することは明確な目標だと明言していた。

そのための資金を確保するため、GICに自社株の一部を譲渡する。GICがメッサーに何パーセント出資するかは明らかにされていない。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、GICはメッサー株およそ20%を約20億ユーロで取得するという。

メッサーの売上高は17年時点で12億ユーロだったが、リンデとの取引により17億ドル(プロフォーマベース)が上乗せされた。その後も成長を続け、昨年は42億ユーロに達した。今後も内部成長と買収を通して事業を拡大していく意向を示している。この戦略をGICは長期支援していく。

メッサーは1898年、当時学生だったアドルフ・メッサーが創業した老舗企業。メッサー一族は1960年代に経営権を喪失したが、2000年代に入って同族企業としての再建を果たした。創業125周年に当たる今年は今回の取引により、成長に向けた新たな一歩を踏み出すことになる。

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