欧州委員会は9月22日、欧州連合(EU)域内における航空交通管理の一元化を目指した「単一欧州空域(Single European Sky)」構想に基づく法的枠組みの改革案を発表した。航空管制制度の統合を進めて飛行経路を最適化し、空の渋滞を緩和して遅延や燃料コストの増大を解消するのが狙い。欧州委は航空機をより安全で効率的に飛行させることで、二酸化炭素(CO2)排出量を最大10%削減できると試算している。
欧州では国ごとに細分化された航空交通管制に従って飛行経路が設定されているため、EU域内を結ぶ路線の飛行距離は最短ルートに比べて平均42キロ長く、遅延や燃料代の増大を招いている。欧州委によると、こうした非効率な航空交通管理による遅延によって2019年はEU全体で約60億ユーロ(約7,350億円)の損害が生じ、CO2排出量を1,160万トン押し上げた。
EU加盟国は09年に採択した単一欧州空域の実現のための法的枠組みに基づき、域内27カ国とノルウェー、スイス、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチアの計31カ国に拠点を置く60の航空管制センターが管轄する計650の空域を9つの「機能的空域ブロック(Functional Airspace Blocks=FAB)」に再編することで合意している。しかし、実際には依然として多くの国で管制業務の独占体制が維持されており、統合に向けた取り組みは足踏み状態にある。
欧州委はより効率的な航空交通管理を実現するため、渋滞を解消して最短ルートを飛行できるようにするためのネットワーク強化、データサービスの推進、フライトの環境負荷に基づく航法システム使用料の設定などと提案している。
欧州委は13年にも今回と類似した内容の改革案を提示したが、ジブラルタル航空の管轄権をめぐり英国とスペインが激しく対立して合意に至らなかった。今年1月に英国がEUを離脱したため、欧州委は改革を阻む障害はなくなったとの見方を示している。