スイスに本社を置く電動スポーツカーの新興企業ピエヒ・オートモーティブは5日、同社の監査役会会長にマティアス・ミュラー氏(67)が就任したと発表した。ミュラー氏は、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)やVW傘下の高級スポーツカーメーカー、ポルシェの社長を務めた経歴を持つ。また、最高経営責任者(CEO)を二頭体制とするなど、開発中の電動スポーツカーの市場投入に向けて経営陣を強化した。
ピエヒ・オートモーティブは、トニ・ピエヒ氏とレア・シュタルク氏が設立した新興企業。2019年のジュネーブモーターショーに試作車を出展し、注目を集めた。トニ・ピエヒ氏は、VWグループの権力者であったフェルディナント・ピエヒ氏の13人の子供の一人。
■ 高級ブランド出身者が経営陣に
二頭体制とするCEOの一人は、4年前から同社の最高技術責任者(CTO)を務めているクラウス・シュミット氏が兼任する。シュミット氏は独高級車メーカーBMWの出身。もう一人のCEOであるアンドレアス・ハンケ氏はCEOと最高マーケティング責任者(CMO)を兼任する。ハンケ氏はこれまで、ポルシェのほか、高級オーディオ機器メーカーのブルメスターに勤務した経験があり、ハイエンド市場における知見をブランド戦略などに生かしていく。
同社はさらに、米電気自動車メーカー、テスラで欧州市場の販売責任者を務めたヨッヘン・ルダート氏を販売責任者に迎えたと発表した。
ピエヒ・オートモーティブはすでに、投資ラウンドAを終えており、現在は、スイス金融大手のUBSの主導のもと、投資ラウンドBの準備を進めている。投資ラウンドAでは、電子決済サービスのペイパルの創業者である米起業家・投資家のピーター・ティール氏が同社に出資した。
同社は現在、2人乗りの電動スポーツカーの車両コンセプトを3タイプ計画しており、2022年末に最初のモデルを量産化する計画。当該モデルは、4分40秒で充電容量の80%を充電し、400キロメートルを走行することができる。1回のフル充電における航続距離は500キロメートル(WLTP)となる。