英の離脱協定修正法案、上院が無効化

英国が欧州連合(EU)と締結した「離脱協定」の一部の条項を政府の判断で変更できるようにする国内法案を無効化する法案を賛成多数で可決した。同国内法案は下院を通過したが、上院は国際法違反としてはねつけた。

問題となっている国内法案は、離脱協定のうち英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境管理に関する部分を一方的に修正するというもの。EUとのFTA交渉が決裂した場合、英本土から北アイルランドに入る物品の関税ルールを英国の裁量で決めることが柱となっている。

英ジョンソン首相は国際協定に違反するのを承知の上で、EU側に揺さぶりをかけて難航しているFTA交渉で譲歩を引き出すため、同法案を提出した。これに反発するEU側は撤回を求めており、すでに法的手続きに入っている。

同法案は9月末に下院で可決されたが、与党・保守党が過半数を割り込む上院では、国際法違反との批判を受け止め、違反とされる条項を削除した法案を可決した。

離脱協定では北アイルランドとアイルランドの紛争に終止符を打った1998年の和平合意に基づき、英国がEUを離脱してからも北アイルランドとアイルランドの間に物理的な国境を設けず、物流やヒトの往来が滞らないようにするため、北アイルランドが英国の関税区になると同時に、工業製品と農産品についてはEUの関税ルールも適用することを取り決めた。

これを英政府の判断で反故にしようとする国内法案をめぐっては、EUだけでなく、米大統領選で勝利を確実にしたバイデン氏も9月にツイッターへの投稿で、和平合意に反すると批判し、成立すれば米国と英国のFTAは実現しないと警告していた。

それでもジョンソン首相は強硬な姿勢を崩しておらず、下院に差し戻された法案を再修正し、問題の条項を復活させる方針を示している。

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