シェルが50年までの事業戦略発表、サプライチェーン全体で排出実質ゼロへ

英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルは11日、事業活動に関係するあらゆる温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする事業戦略を発表した。これまでは石油・ガス生産や電力消費などで生じる自社からの排出分を対象としていたが、新たな目標では顧客に販売したエネルギーの使用による排出分なども含め、サプライチェーン全体で気候中立の実現を目指す。

世界の石油需要がコロナ禍以前の水準に戻るのは早くて22年以降とされる中、主要エネルギー企業は化石燃料への依存度を低減し、再生可能エネルギーなど低炭素分野に軸足を移す動きを加速させている。シェルは20年4月、50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするとの目標を打ち出したが、今回は自社からの排出分だけでなく、原材料の調達や物流、顧客によるエネルギー使用や製品の廃棄など、上流と下流での間接的な排出も対象に加えて目標を厳格化した。

ベン・ファンブールデン最高経営責任者(CEO)は声明で「温室効果ガス排出量を削減し、低炭素エネルギー分野に経営資源を集中させる戦略を加速させることで、株主、顧客、そして社会全体に価値を提供することができる」と強調した。

具体的には目標の達成に向けて石油への依存度を低減し、温室効果ガス排出量の少ない液化天然ガス、バイオ燃料、水素などの生産量を増やす。石油の生産量は19年がピークだったとし、30年にかけて年1~2%のペースで減産する方針。15年ほど前に55カ所にあった製油所は今後10年間に現在の13カ所から7カ所まで減らし、ガソリンと軽油の生産量を55%削減する。

また、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)事業を推進し、分離・回収量を現在の年間450万トンから35年までに2,500万トンに増やすほか、CO2を吸収する森林の整備や保全への投資を拡大する。さらに電気自動車の充電スタンドを現在の6万カ所から25年までに50万カ所に増やす。

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