欧州自動車のステランティスは8日、脱ガソリン車計画を発表した。2025年までに300億ユーロ以上を投じて電気自動車(EV)の開発を進める。販売台数に占めるEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の割合を30年までに欧州で70%以上、米国で40%以上に引き上げることを目指す。うち8割をEVが占める。
同社は4つのEV用車台を開発し、これを用いて「プジョー」「ジープ」「フィアット」など14ブランドでEV車を投入する。1回の充電で500~800キロメートルの走行が可能となる。傘下の独オペルは、欧州で販売する車両を2028年からEVに一本化する。
EV用電池の生産にも力を入れ、欧州と北米で5工場を展開する計画だ。うち1工場は伊テルモリの内燃エンジン工場を転用する。25年までに130ギガワット時、30年までに260ギガワット時の年産能力を確保する予定。電池生産コストの引き下げにも取り組み、24年までに20年比で40%以上の削減を目指す。また、長距離走行、短時間での充電を可能とする固体電池を一部の車種で26年から導入する。
ステランティスはフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とグループPSAが統合して今年1月に誕生した世界4位の自動車グループ。規模を生かし、脱ガソリン車、電動化を進める。
一方、同社は6日、閉鎖を検討していた英子会社ボクソールのエレスメア・ポート工場をEV専用の生産拠点として存続させると発表した。英政府の支援を受けながら、同工場に1億ポンド(約150億円)を投じてEV生産体制を整備する。同社にとって初のEVに特化した工場となる。
同工場では2022年下期にEVの生産を開始する。生産するのはシトロエン、オペル、プジョー、ボクソールのブランドの小型商用バンと、乗用のワゴン車。
PSAは統合前の19年、米ゼネラル・モーターズ(GM)から買収したボクソールがイングランド北西部で運営しているエレスメア・ポート工場について、英国が合意なきEU離脱を迫られ、ボクソールの収益が悪化した場合は同工場を閉鎖する方針を打ち出していた。
存続を決めたのは、英政府が同工場への投資の一部の助成に応じたことが大きい。英フィナンシャル・タイムズによると、助成額は3,000万ポンド程度に上る。さらに、政府が20年11月、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表し、英国内でのEV需要急増が見込めることから、EV専用工場に転用する形で操業を続ける。