フランスで9日から、飲食店や長距離列車などを利用する際、新型コロナウイルスのワクチン接種や検査での陰性を証明する「衛生パスポート」の提示が義務化された。すでに7月下旬から美術館や映画館、スポーツジムなどの利用時に提示が義務づけられていたが、デルタ型変異ウイルスが猛威を振るうなか、対象を拡大して経済活動の全面的な再開を目指す。
衛生パスはワクチンの接種完了、72時間以内に受けたPCRまたは抗原検査での陰性、過去6カ月以内の新型コロナからの回復を証明するもの。今回新たにバーやレストラン、百貨店やショッピングモール、長距離移動のための交通機関(列車、バス、国内線航空便)、病院や高齢者施設などに対象が広げられた。
成人(18歳以上)は対象施設の入口でQRコード形式のデジタルまたは紙の証明書を提示し、施設側がスマートフォンなどで読み取って確認する。違反者には135ユーロ(約1万7,500円)の罰金が科され、施設側は一時的に業務停止が命じられる可能性もある。また、12歳~17歳の利用者については、9月30日から衛生パスの提示が義務づけられる。
こうした中、フランス各地で衛生パスの提示義務化に反対するデモが続いている。先進国ではワクチン接種はあくまで任意とされているが、証明書の提示義務化は事実上、接種の強要につながり、個人の自由を奪うというのが反対派の主張。
飲食店などが義務化の対象になってから最初の週末となった14日には、全国200カ所以上で抗議デモが行われ、約21万人が参加した。パリやマルセイユ、ニースなどでは参加者が「衛生パスはアパルトヘイト(人種隔離政策)」「接種を拒否する自由を」などと書かれたプラカードを掲げて行進した。
フランスではこれまでに人口の約60%がワクチン接種を完了した。政府が7月12日に衛生パスの提示義務化を打ち出す前は、接種完了率が40%以下にとどまっていた。一方、6月下旬に2,000人台だった1日の新規感染者数は、8月に入り2万人以上で推移している。