仏が原子炉6基建設へ、既存原発の運転延長も検討

フランスのマクロン大統領は10日、国内で新たに原子炉6基を建設すると発表した。地球温暖化対策を進めながらエネルギー自立と電力の安定供給を確保するため、再生可能エネルギーと併せて原発を活用する必要があると訴えた。

フランスは電力需要の70%を原発に依存しているが、国内での新規着工は2007年以来となる。建設するのは改良型の欧州加圧水型原子炉「EPR2」。1基目の着工は28年で、35年の稼働を目指す。建設を担うフランス電力公社(EDF)によると、費用は約500億ユーロ(約6兆5,480億円)とされる。

マクロン氏は仏東部ベルフォールで演説し、「わが国に必要なのは国内の原子力産業を再生させることだ」と強調。6基とは別に、さらに8基の建設を検討すると表明した。また、現在は40年以上となっている既存原発の運転期間について、50年以上に延長可能か検討するよう規制当局に指示したことを明らかにした。

東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、欧州で脱原発の動きが広がる中、オランド前政権は15年、原発依存度を25年までに50%に引き下げる目標を法制化した。これに対し、マクロン氏は18年、電力の安定供給を確保するため原発稼働を継続すると表明。依存度50%の目標は維持したまま、達成期限を35年に設定し直し、国内に56基ある原子炉のうち14基を同年までに廃炉にする方針を打ち出した経緯がある。しかし、50年までに温室効果ガス排出量を実施ゼロにする目標を達成するため、原発利用を推進する必要があるとして、21年11月に建設を再開すると表明していた。

フランスでは約22万人が原発産業に従事している。マクロン氏は「福島の原発事故後、いくつかの国は極端な選択をとって原発に背を向けた」と指摘。今後は電気自動車の普及などで電力需要が増大するとの見方を示し、「新たに数万人の雇用が見込まれる原子力産業を再生させなければならない」と強調した。

原子力政策をめぐっては、欧州委員会が今月2日、一定の条件下で原子力と天然ガスを脱炭素化に貢献するグリーンな投資対象と認定する方針を打ち出した。フランスは6月までEU議長国を務めており、原発の新規建設表明によって同分野で主導権を握り、4月の大統領選挙に向けて産業を振興する姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。

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