欧州委員会のシムソン委員(エネルギー担当)は5月23日、冬を迎える前に欧州連合(EU)として天然ガスの共同調達を開始する方針を明らかにした。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰する中、共同調達で安定供給を図るとともに、交渉力を高めて価格上昇を抑制するのが狙い。EU加盟国は3月の首脳会議で天然ガスの共同調達に合意していたが、これまで開始時期など具体的な計画は不明だった。
シムソン氏はロイター通信とのインタビューで「世界的に天然ガスの調達が難しくなっており、年内に確保できるガスの量は限られている」と指摘。そのうえで、米国が年内に150億立方メートルの液化天然ガスを欧州向けに追加供給するという、3月にEU・米間で合意した取り決めに触れ、「政治的な決断によって初めて調達が可能になるケースもある」と強調。EUが協調して行動することで、加盟国単独では得られない供給量を確保することができると述べた。
EUは毎年約1,550億立方メートルの天然ガスをロシアから輸入しており、ガス需要の約40%をロシアに依存している。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴いエネルギー価格の高騰が深刻化する中、EUはロシア依存からの脱却を図りながら、エネルギーの安定供給を確保するための施策を相次いで打ち出しており、欧州委が希望する国を代表して供給側との交渉にあたるガス共同調達もその一環。
また、EU加盟国と欧州議会は5月19日、加盟国に一定量のガス備蓄を義務付ける規則案の内容で合意した。これはエネルギー需要が高まる冬場に向けた対応策として、欧州委が3月に提案していたもの。加盟国は自国のガス貯蔵施設について、11月までに80%の貯蔵率を達成しなければならず、EU全体で今冬に85%の貯蔵率を目指す。