英国のジョンソン首相は1日、イングランド東部サフォーク州にあるサイズウェル原子力発電所の新設計画に7億ポンド(約1,130億円)を投じると表明した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響でエネルギー供給が不安定化する中、原発政策を前進させてエネルギー自給率の向上を図るとともに、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標の達成に向けて脱炭素化を推進する。
投資対象の「サイズウェルC」原発は、フランス電力(EDF)グループが手がける建設費200億ポンド規模の大型プロジェクト。出力160万キロワットの欧州加圧水型炉(EPR)2基を備え、英国の電力需要の約7%を賄うとされる。英政府は昨年、大規模な原発計画に最大17億ポンドを拠出する方針を打ち出しており、その一部をサイズウェルCに充てる。
ジョンソン氏は新首相の就任に伴い、9月6日に退任する。サイズウェルを訪問した同氏は首相として最後となる政策演説で「原子力発電は施設の建設と運用にコストがかかるように見えるが、プーチン(露大統領)が始めた戦争で何が起きたか考えてもらいたい。現在のエネルギー価格と比べれば確実に安い」と指摘。新首相の下で原発政策を前進させ、サイズウェル原発の建設計画を進めるべきだと強調した。
EDFは現在、イングランド南西部サマセット州にある「ヒンクリーポイントC」原発の建設を進めている。建設費用は現時点で250億~260億ポンドと見積もられている。同プロジェクトは建設の遅れやコスト超過が相次ぎ、現時点で27年の稼働開始が見込まれている。