欧州連合(EU)加盟国は20日に開いた首脳会議で、欧州委員長など今秋に任期が切れるEUの主要ポストの人選について協議したが、調整が難航し、決定に至らなかった。30日に臨時首脳会議を開き、再協議する。
任期切れとなるのはユンケル欧州委員長、トゥスクEU大統領(欧州理事会常任議長)、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁など。
最大の焦点となっているのは、EUの内閣に当たる欧州委員会の委員長の人選だ。EUのルールでは加盟国が選び、欧州議会が承認するシステムとなっている。
EUでは2009年に発効したEUの新基本条約「リスボン条約」によって、加盟国が欧州委員長の人選で欧州議会選挙の結果を考慮することになったため、前回は欧州議会の最大会派が推す候補者が委員長に就任する「Spitzenkandidat(ドイツ語で首位の候補者)」と呼ばれる仕組みが導入された。今回も同制度を適用すれば、本来ならば5月23~26日に実施された欧州議会選挙で最大会派となった中道右派・欧州人民党(EPP)が推すウェーバー欧州議員(独出身)を加盟国が新委員長に選び、欧州議会が承認するはずだった。
加盟国では独メルケル首相がウェーバー議員を支持している。しかし、仏マクロン大統領が、ウェーバー氏に政府やEU機関の要職に就いた経験がないことから反対。前回の方式にとらわれず、適任者を選ぶべきと出張し、激しく対立している。さらに欧州議会内でも、EPPが最大会派の座を維持したものの、大きく議席を減らしたことから、第2会派の中道左派・欧州社会・進歩連盟(S&D)や躍進したリベラル系の欧州自由民主連盟がウェーバー氏の就任に反対している。
加盟国は今回の首脳会議で、欧州委員長をはじめとする人選での合意を目指していた。しかし、トゥスク大統領によると、なお調整が難航し、過半数の支持を得た欧州委員長候補がいなかったことから、決定を30日まで先送りすることになった。