SALD BV

オランダのアイントホーフェンに拠点を置く新興企業。同国の応用科学研究機関(TNO)の研究者が開発したSpatial Atomic layer Deposition(SALD)と呼ばれる薄膜形成技術により、車載電池の寿命や安全性、容量を大幅に向上させることができる。同社は、SALDバッテリー技術の市場化を目指す。

SALD技術の活用により、電気自動車の航続距離は、小型電池であれば1,000キロメートル以上に延長することが可能になる。より大型の電池を搭載すれば1回のフル充電で2,000キロメートル以上の走行も可能になるという。同技術の開発では、ドイツのフラウンホーファー研究所などの有力研究所と協力している。

薄膜を形成する原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)は、膜の形成に時間がかかる難点があったが、TNOの研究者は2008年に膜の質を維持したまま、形成時間を5~10倍に加速する技術を開発した。同技術を活用し、ソーラーパネルを量産する機械を販売するための会社としてSoLayTecが設立されたが、このSALD技術を産業化するノウハウをさらにさまざまな成長市場に生かすために、新会社SALDが2019年に設立された。

SALD技術により、車載電池の充電時間は5倍に加速することができるという。充電時間10分で電池容量の80%、20分でフル充電ができるようになる。なお、同社のFrank Verhage社長は、SALD技術を使用した充電池の電気自動車への搭載は、早くて2022~2023年になると見込んでいる。

SALD技術は、現在主流の電解液を使用した電池だけでなく、将来の実用化が期待される全個体電池にも活用することができるという。

同技術を活用すれば、1回の充電で1週間使用できるスマートフォンや、1カ月に1回の充電で済むスマートウオッチも可能になるという。

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