2012/2/20

総合 –EUウオッチャー

欧州委が年金改革に関する政策文書発表、定年延長など提言

この記事の要約

欧州委員会は16日、安全で持続可能な年金制度の確立を目指した年金改革に関する政策文書をまとめた。少子高齢化の進展や長期化する財政・金融危機を背景に、年金制度が直面するさまざまな課題に加盟国がどのように対処すべきかを考察し […]

欧州委員会は16日、安全で持続可能な年金制度の確立を目指した年金改革に関する政策文書をまとめた。少子高齢化の進展や長期化する財政・金融危機を背景に、年金制度が直面するさまざまな課題に加盟国がどのように対処すべきかを考察し、EUとして進むべき方向性を示したもの。年金政策は各国政府に権限があるが、欧州委は年金制度を維持するうえで定年延長を含む就業期間の延長がカギを握るとし、高齢者が働きやすい環境の整備を急ぐ必要があると指摘している。

\

欧州委によると、EUでは現在、年金受給者が人口の24%を占め、支給額は域内総生産(GDP)の平均10%に上る。一方、就労人口は2013年から減少に転じるため、2060年には就労者(15-64歳)と65歳以上の高齢者の比率が2対1となり、年金支給額はGDPの12.5%に膨らむ見通し。英国、ドイツ、イタリアなどは20年以降に年金支給年齢を引き上げる方針を打ち出しているが、抜本的な年金改革を行わない限り年金制度の維持は困難との見方が広がっている。

\

欧州委のアンドル委員(雇用・社会問題担当)は「就労中と定年後に過ごす時間をよりバランスの取れたものにする必要がある。いま改革を実行すれば、将来的に適切な年金を保証することができる」と指摘。一定の条件が整えば、年金支給開始年齢に達した後も働きたいと考えるEU市民が極めて多いとの調査結果に触れ、定年延長を含む就業期間の延長が改革の柱になるとの考えを示した。

\

欧州委はこのほか、男女の年金支給開始年齢を一本化することや、域内の他の国に移動した就労者に対する年金の継続適用に関するルール作り、定年後に見込み通りの年金が確実に支払われるための監視システムの確立などを提言している。

\