2012/7/2

競争法

マイクロソフトの違反問題決着、欧州裁が制裁無効化の申立棄却

この記事の要約

競争法違反に対する是正命令の不履行を理由に、欧州委員会が米マイクロソフトに科した制裁金をめぐり、同社が決定の無効化を求めていた訴訟で、欧州司法裁判所の一般裁判所は6月27日、マイクロソフトの主張を退ける判断を下した。制裁 […]

競争法違反に対する是正命令の不履行を理由に、欧州委員会が米マイクロソフトに科した制裁金をめぐり、同社が決定の無効化を求めていた訴訟で、欧州司法裁判所の一般裁判所は6月27日、マイクロソフトの主張を退ける判断を下した。制裁金の額は当初の水準から4%減額されたが、是正命令の不履行を理由に欧州委が企業に制裁金を科した初のケースは、競争法違反の認定から8年を経てようやく決着した。

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今回の事案は、基本ソフト(OS)市場におけるウィンドウズの独占的地位を乱用し、ソフトウエア市場で有利に事業展開するマイクロソフトの商慣行は競争法に違反するとして、欧州委が同社に4億9,700万ユーロの制裁金を科すと共に、ウィンドウズと音楽・映像再生ソフト「メディアプレーヤー」のセット販売の中止、互換性の確保に必要な技術情報の開示――の2点を命じた2004年3月の決定が発端。当時は欧州市場で販売されるパソコンの約95%にウィンドウズが搭載されていた。

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マイクロソフトはメディアプレーヤーを初期搭載しないウィンドウズの販売と制裁金の支払いには応じたものの、欧州委が求めるレベルの情報開示には難色を示し、04年6月に決定の無効化を求めて第一審裁判所(現在の一般裁判所)に提訴。欧州委は06年7月、情報開示に関する同社の対応が不十分とみなし、2億8,050万ユーロの追加制裁金の支払いを命じた。マイクロソフトは決定を不服として再び提訴したが、07年9月に欧州委の決定をほぼ全面的に支持する判決が言い渡されたのを受け、マイクロソフトは同年10月に特許使用料の大幅な引き下げなどに同意。欧州委は08年2月、マイクロソフトに追加的な制裁金を科した06年7月から同社が是正命令の完全順守で合意した07年10月までの期間を対象に、是正命令不履行を理由として新たに8億9,900万ユーロの制裁金を科したところ、マイクロソフトが異議を申し立て、EUと同社の間で係争が続いていた。

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一般裁判所は声明で「欧州委の決定を基本的に支持する」と表明。制裁金を当初の8億9,900万ユーロから8億6,000万ユーロに減額した理由に関しては、欧州委の04年の決定に対する裁判所の判断が出るまでの間、マイクロソフトは欧州委からオープンソースの製品配布を制限する権利を認められていた点を考慮したと説明している。

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欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)は「マイクロソフトに自らの義務を履行させるため、欧州委が講じた一連の措置が完全に正当と認められた」と裁判所の判断を歓迎。一方、マイクロソフトは判決を受けて遺憾の意を表明したが、EU司法裁に上訴するかどうかについては言及していない。

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