2013/3/18

産業・貿易

欧州議会がCAP改革案を可決、補助金受給の上限設定など

この記事の要約

欧州議会は14日の本会議で、2014-20 年を対象期間とする次期EU共通農業政策(CAP)の改革案を賛成多数で可決した。加盟国の財政難を背景に農業分野への支出に厳しい目が向けられる中、予算の約7割を占める直接支払い(所 […]

欧州議会は14日の本会議で、2014-20 年を対象期間とする次期EU共通農業政策(CAP)の改革案を賛成多数で可決した。加盟国の財政難を背景に農業分野への支出に厳しい目が向けられる中、予算の約7割を占める直接支払い(所得補償)の抜本的な見直しがCAP改革の柱で、補助金の受給額に一律の上限を設けることなどを盛り込んだ内容となっている。EU加盟国は18、19日の閣僚理事会でCAP改革に関する審議を予定しており、月内にも欧州議会、加盟国、欧州委員会の間で最終合意に向けた協議がスタートする見通しだ。

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CAPはEU予算の約4割を占める最大の支出項目で、農業者の所得を保証するための価格・所得政策などに年間約600億ユーロが投じられてきた。しかし、巨額の財政赤字を抱える加盟国にとって農業分野への支出は大きな負担になっており、14年以降はCAP予算が年間550億ユーロに抑制される。欧州委員会はこうした点を踏まえ、より公平かつターゲットを絞り込んだ補助金の支給や農業と環境政策の融合などに主眼を置いた改革案を打ち出し、欧州議会と閣僚理事会で検討が重ねられてきた。

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欧州議会で可決された改革案によると、農家への直接支払いに関しては欧州委の提案通り、受給額に年間30万ユーロの上限が設けられ、年間15万ユーロ以上の補助金はすべて課税対象となる。一方、加盟国は持続可能な農業を実現するため、直接支払いの予算枠のうち30%を気候変動への対応や環境保全につながる農法などに対する補助金(緑化支払い)として確保しなければならない。具体的には作物の多様化、永年牧草地や生態系の維持を目的とする休閑地の維持・管理などの要件を満たした農家は、別枠で緑化支払いを受けることができる。

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このほか加盟国は若い世代の農業者や小規模農家への支援策として、予算枠の一部を基礎支払いに上乗せすることが義務づけられる。また、直接支払いの対象は「実際に活動している農業者」に限られ、たとえばゴルフ場や飛行場の所有者などは受給対象から除外される。一方、欧州委は加盟国間における支払い水準の格差を是正するため、20年までに域内の全対象農家がEU平均の少なくとも90%を受け取れる体制にする目標を打ち出したが、欧州議会ではこの割合を65%とする修正案が承認された。

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さらに牛乳、ワインを対象とする生産調整に関しても欧州委の提案に大幅な修正が加えられた。まず、15年に生産調整が廃止される牛乳に関しては、自発的に生産量を5%以上削減した農家に対し、最低3カ月にわたり補助金が支給される。ただし、生産調整の廃止を延期する案は否決された。さらにワインについても30年まで作付け規制を維持する案が支持された。

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