2013/6/24

環境・通信・その他

欧州議会環境委、排出枠入札の一部延期を承認

この記事の要約

欧州議会環境委員会は19日、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間(2013-20年)に有償配分する排出枠の入札を一部延期する「バックローディング」構想について、欧州委員会の提案よりも実施条件を厳格化した修正案を賛 […]

欧州議会環境委員会は19日、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間(2013-20年)に有償配分する排出枠の入札を一部延期する「バックローディング」構想について、欧州委員会の提案よりも実施条件を厳格化した修正案を賛成多数で承認した。一部で当局の市場介入に反対する声が依然として根強いため、入札延期は1回限りとすることや、延期措置を講じた翌年に保留分の入札を実施するなどの条件を盛り込んだ。欧州議会の主要3会派が修正案を支持しているため、7月3日の本会議でも可決される公算が大きいが、ポーランドなどは排出権価格の上昇が企業に重い負担を強いるとしてバックローディングに強く反対しており、今後は加盟国の対応が焦点になりそうだ。

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欧州ではユーロ危機に伴う景気低迷で企業の生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じた結果、排出権価格は今年に入り1トン当たり5ユーロを下回る水準で推移している。欧州委員会は排出枠の需給改善を図るため、13-15年に有償配分する約35億トンの排出枠うち、9億トン分の入札時期を16年以降に先送りする措置を提案していたが、欧州議会は4月の本会議で同構想を否決。環境委を中心に妥協点を探る動きが続くなか、最大会派の欧州人民党グループ(EPP)、第2会派の欧州社会党グループ、第3会派の欧州自由民主同盟グループ(ALDE)が12日に修正案の内容で合意した。

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これによると、欧州委は関係するセクターが新たなコスト負担によってEU域外への移転を余儀なくされる「重大なリスク」にさらされないことが影響評価で確認された場合に限り、20年までの間で1回のみ、最大9億トン分の入札を延期できる。ただし、同措置を講じた翌年に保留分の入札を実施しなければならない。また、保留分のうち6億トン分の売却益は低炭素化技術の開発推進を目的とする基金の創設資金として活用される。

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環境委の決定は拘束力を持たないが、欧州議会では定員754に対して主要3会派が合わせて544議席を占めるため、本会議でも修正案が可決される見通し。ただ、市場では入札延期はあくまでも「緊急措置」にすぎず、「排出権価格の押し上げ効果は限定的」(独コメルツ銀行のアナリスト)との見方が有力だ。

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