スイス中銀が15年ぶり利上げ、英中銀も5会合連続で

世界的にインフレ圧力が高まる中、スイスと英国の中央銀行が相次いで政策金利の引き上げを決定した。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で原油や天然ガス、食料品など幅広い商品の価格が大幅に上昇しており、両行とも追加利上げの可能性を示唆している。欧州中央銀行(ECB)も7月に11年ぶりの利上げに踏み切る方針で、欧州では金融引き締めの動きが加速している。

スイス国立銀行は16日、政策金利を0.5%引き上げてマイナス0.25%とすると発表した。利上げは2007年9月以来、約15年ぶり。ロイターの調査では、ほぼ全てのエコノミストが金利据え置きを予想していたが、消費者物価の伸び率が中銀目標の2%未満を4カ月連続で上回っており、利上げに踏み切った。物価高に対処するため、状況に応じて追加利上げも検討する。

5月の消費者物価の伸び率は前年同月比2.9%と、約14年ぶりの高水準となった。中銀は22年の予想インフレ率を3月時点の2.1%から2.8%、23年は同0.9%から1.9%に引き上げた。

ジョルダン総裁は記者会見で「今回の利上げがなければインフレ見通しはさらに高くなっただろう」と指摘。「新たなインフレ予想に基づき、近い将来に政策金利の一段の引き上げが必要になる可能性がある」と述べた。ただし、追加利上げの時期や規模については言及しなかった。一方、スイスフラン相場について、ジョルダン氏は外国為替市場で「もはやフランは過大評価されていない」と指摘。必要に応じて市場介入する方針を示した。

一方、英イングランド銀行は16日、政策金利を0.25%引き上げて1.25%とすると発表した。利上げは2021年12月から5会合連続。政策金利は2009年2月以来、約13年ぶりの高水準となった。

15日まで開いた金融政策委員会で、委員9人のうち6人が0.25%の引き上げを支持。3人は0.5%の引き上げを主張した。政策(MPC)委は「より持続的なインフレ圧力の兆候に対して特に注意を払い、必要であれば力強く行動する」と表明。今後の政策方針について「さらなる利上げの規模やペース、タイミングは経済見通しや物価に関するMPCの評価に基づいて判断する」と説明した。

ロシアのウクライナ侵攻を背景とするエネルギー価格の高騰などで、4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比9%の上昇と、約40年ぶりの高水準となった。中銀はCPIの伸び率が今後数カ月は9%を超える水準で推移し、「10月には11%をやや上回る」との見通しを示した。5月の前回会合では「10~12月に10%をやや上回る」との見方を示しており、予想インフレ率を引き上げた。

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